これが英国ミュージカリズム
英国ミュージカルは日本人向け である。
ジョージ・スタイルスの楽曲はポプュラーだったといったら、華美であり、単純化されたミュージカルに思えてくるだろう。
しかし、どの楽曲も、この『ホンク!』のために生誕した、唯一無二の健気なアヒルである。
劇団四季を退団後初主演というキムスンラもさることながら、伊藤咲子の、情愛をハーモラスに包み込む歌唱力は、 それこそ“七面鳥”だった。
さすが歌手である。
私が魅惑されたキャラクターは、卵を割り、世の中に出てきたばかりのアヒル4兄弟であった。その5羽目にあたる“末っ子”が実は白鳥ホンクである。
♂二羽、♀二羽ずつの分類だが、キャスト陣の背丈が 食パンのように均一であった(!)
どうやら目を凝らすと、10代少女がイエローのエアな衣装をまとい、 生新に 4匹のアヒルを演じているようである。
それは「健康な少年少女」であった。
愛らしい。
もう一度 指摘しよう。
『ホンク』はブロードウェイ級のダンスではない。何せミュージカル俳優による本格派舞台とは称せないキャスト陣だ。
ただ、伊藤咲子の歌唱力は、英国ミュージカルを私にとって決定的なものとしたのであった。