語り継がれるランチは「人情」です
「街の中華屋さん 」が懐かしい。
それは、住宅街の一角を占め、店内はうす暗い照明であり、ブラウン管がラジオのような役割を果たしていた空間だ。
老夫婦が 汚れだらけの制服を着用していた。たしかに、醤油の跡こそ付着済みだが、無条件に清潔な、毎日漂白洗剤を使用するのだろう「純白」であった。
私は、こうした「街の中華屋さん」が営業中であると軒先をくぐってしまいたくなる。8割は地元住民の集う「いつもの お願い」かもしれない。
老夫婦は 別に、ラーメンのプロでも、チャーハンのプロでも、ハンバーグ定食のプロではない。
その「何でも屋さん」は、まるで地域の総合商社だ。
しかも、家庭の主婦と変わらない手料理。粗がある。油がある。
私は錆びれた「街の中華屋さん」に一体何を求めて 来店するのだろうか。
「路地裏」というのは再開発のターゲットになりえる土地だろう。
戦後、各都市にあった闇市が消滅した理由と似ている。
『路地裏物語』は まず、その美術セットがテレビ・ドラマを超えた精巧さ だったから、そこに役者が走り回ったり、座ったりしていることが 既に「シチュエーション」である。
こんな洋食屋が存在すれば、珈琲を嗜まない一週間は ない。