路地裏物語 公演情報 劇団暴創族「路地裏物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 語り継がれるランチは「人情」です
    「街の中華屋さん 」が懐かしい。

    それは、住宅街の一角を占め、店内はうす暗い照明であり、ブラウン管がラジオのような役割を果たしていた空間だ。
    老夫婦が 汚れだらけの制服を着用していた。たしかに、醤油の跡こそ付着済みだが、無条件に清潔な、毎日漂白洗剤を使用するのだろう「純白」であった。


    私は、こうした「街の中華屋さん」が営業中であると軒先をくぐってしまいたくなる。8割は地元住民の集う「いつもの お願い」かもしれない。
    老夫婦は 別に、ラーメンのプロでも、チャーハンのプロでも、ハンバーグ定食のプロではない。
    その「何でも屋さん」は、まるで地域の総合商社だ。
    しかも、家庭の主婦と変わらない手料理。粗がある。油がある。

    私は錆びれた「街の中華屋さん」に一体何を求めて 来店するのだろうか。



    「路地裏」というのは再開発のターゲットになりえる土地だろう。
    戦後、各都市にあった闇市が消滅した理由と似ている。


    『路地裏物語』は まず、その美術セットがテレビ・ドラマを超えた精巧さ だったから、そこに役者が走り回ったり、座ったりしていることが 既に「シチュエーション」である。
    こんな洋食屋が存在すれば、珈琲を嗜まない一週間は ない。

    ネタバレBOX

    キャスト陣のW主演は はらみか と 緒方有里沙。Bランチだと はらみかは妊婦役(飯館みち)を演じており、義理の父親に低姿勢を貫く「昔の女」であるが、これは「できちゃった婚」が稀有だった1980年代を意識した演技だろう。
    ただ、その「不貞さ」は解釈できなかった。
    「できちゃった婚」。しかも それが問題のある妊娠だった。告白時から 飯館みちが登場するシーンを遡っても、金太郎飴のごとく やはり「昔の女」だったのである。


    また、もう一方のW主演・緒方の演技にも言及しておく。
    彼女はBランチだと反抗的というか、周囲から一歩距離を置く気の強い娘役(矢吹 栄子)である。
    特に爽やかだった演技は宇都宮 英恵 演じるアルバイト(浅川 美奈子)との一幕だ。
    私はコメディエンヌ・宇都宮が変顔ポーズを強調しても、「見届け人」の緒方が格別な演技をしなければ、その勢いが暴発してしまった可能性があったと考える。
    とても 爽やか だったため、横山 陽紀 演じる少年(富岡 正志)の落ち着いた演技と癒しの対比になる構成。それが感情のコントロールを容易にさせた。


    そのスプーンに夢を。
    その箸に家族を。

    『路地裏物語』は 私と同じ目的意識をもち、「街の中華屋さん」の軒先をくぐる人間を倍増させる「懐かしさ」である。

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    2014/04/19 00:51

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