満足度★★★★
生きるのに必要なもの
観劇の間中、ずっと吉本ばななの{アムリタ」を思い出していた。この小説の中でヒロインの祖父が「今のこの瞬間を覚えておきなさい。それはきっとお前たちの生きる力になるから。」(←すみません、うろ覚えです)というようなことを言うシーンがあるのですが、この言葉のとおりに、萌え出づる命や生きる力の原動力になる幸福な瞬間を様々に見せてくれた舞台でした。それは友人との楽しい思い出だったり、教師への憧憬であったり、みんなで合唱した歌であったりして、私たちは少年時代にこういう幸福な瞬間を体験するのだけれど、そしてそれは大いなる養分となって私たちの生命力を強くしてくれるのだけれど、たぶんあまりに日常的に過ぎて意識することもなく忘れ去ってしまうのだろう。けれど、苦しい思い出がフラッシュバックして人を苦しめるのと同じように、幸福な思い出もまたフラッシュバックしてどこかで私たちを支えてくれているのだと思う。そんなことを実感させてくれる舞台でした。