男の60分 -2014- 公演情報 ゲキバカ「男の60分 -2014-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    タイトルは60分だけど80分くらいはあるよ
     母の通夜、久しぶりに劇作家は故郷に帰る。変わったことと変わらなかったこと。弟が、母の棺に入れようと思う、と纏めた母の荷物の中から、小学校6年の時に書いた作文が出てくる。母は、長男の作文をとっておいてくれた。その作文を読み返すうち、作家は、小学校時代に戻っている。

    ネタバレBOX

      大阪の小学校へ転校する迄、兄弟は東京で暮らしていた。移ったばかりの兄弟は、山の上に広く平らなスペースがあるのを見付けてキャッチボールをしていたが、地元の、此処を根城にしているグループと喧嘩になる。だが、互いによく戦い、仲良くなった。兄と弟のクロ、秘密基地リーダーのもじゃお、泳ぎが一番の河童、トタン屋根の家に住んでカッパライをやっているトッタン、焼肉屋の息子、コチュジャン、スポーツ一家に生まれながら、どういうわけか一向に芽の出ないケーの7人だ。
     様々な遊びをするが、問題も起きる。コチュジャンと遊んじゃいけない、という親が居て、訳を問い質すとチョンだからだ、との答え。言っている本人も、皆もその意味が分からない。分かったのは、コチュジャンだけだった。彼は、「言うなよ」と念押しして、自分は在日朝鮮人だと明かす。だが、仲間にはどういうことを意味しているのか分からなかった。然し、コチジャンが、辛い物が嫌いで本当は、この綽名も好きではない、ということを告げると、皆で新しい綽名を考える。この辺り、在日少年のアイデンティティーの問題と差別の問題が絡んで実に見事である。兄弟の母の対応も素晴らしい。コチュジャン改まりカルビクッパの話を聞いた母は、日本食も韓国料理も好きだ、と言い、「カルビクッパと一番仲の良い友達になるのよ」と兄弟に諭すのだ。
     また、時化の日、近くを流れる糞川が氾濫を起こしそうになっているのに、泳ぎに自身のある河童は、皆の制止を振り切って飛び込んだ。向こう岸に近付いた所で流れて来た流木に当たって流される。子供達は必死に救助し九死に一生を得たが、河童は足に大怪我をして、オリンピックを目指すどころでは無くなってしまった。彼の母は、遊び仲間の所為だと言いふらし、子供達の親の下にも捻じ込んできた。おまけに、河童には、それまでの仲間とは遊んではいけない、と命令したのだった。その為、河童は女の子達とままごとをするようになり、仲間を見掛けると逃げるようになってしまったが、本当は、仲間と遊びたかったのだ。皆と遊べなかった理由を聞いた仲間は、河童も仲間になって遊べるケンケケンパ等をして遊ぶ。
     ケーの話もあるが、これは、伏せておこう。観てのお楽しみである。何れにせよ、差別だの、アクシデントだのと実際、子供達の暮らしの中で起こる深刻な問題を、キチンと織り込んで真正面から適確に捉え乍ら、勘所を掴んで正確に見据え、その後の子供達の人生展開の中にも、子供時代の体験をキチンと納得の出来る形で織り込み乍ら、人の世の暖かさもさりげない科白で見事に表現している。
     役者陣の鍛錬された体、そこから生まれる爽やかでスピーディーな演技も美しい。

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    2014/03/22 02:03

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