満足度★★
スーパー歌舞伎
イキウメの前川知大さんの作・演出による、哲学的でありながらエンターテインメント的趣向に富んだ作品でしたが、長い上演時間の割にはあまり満足できるボリューム感がありませんでした。
冒頭に出演者一同による口上があり、ユーモラスな演出でそのまま本編に突入し、自分の彫る仏像が民衆の為ではなく権力者の為になってしまっていることに悩んで彫ることを止め、ついには仏像を壊す様になってしまった若い仏師の悟りの物語で、命の大切さや正義について考えさせる内容でした。
各幕で派手な立ち回りや台詞の聞かせ所があり、飽きさせないように工夫された構成で、特に三幕目中盤からは派手な演出が連発され、エンターテインメントとして楽しめました。
雅楽の楽器や西洋系の打楽器も使った音楽の録音を流していて、普通の歌舞伎の三味線と唄中心の物に比べて迫力があったものの、決めの台詞の度に感傷的な音楽が流れるというベタな演出が最後まで続き、安っぽくて興醒めしました。
笑わせようとしていないと思われる場面で笑いが起きていて、古典物だと現代との感覚の違いで仕方がない所もあるとは思うのですが、新作であればシリアスな箇所はちゃんとシリアスに感じられるように調整して欲しいと思いました。
福士誠治さんが歌舞伎役者同様の良く通る台詞回しで魅力的でした。浅野和之さんがコミカルな狂言回しを演じていて場を和ませ楽しかったです。佐々木蔵之介さんは役作りもあるのでしょうが、こもった発声で周りから浮いている様に感じました。