ハミングインウォーター 公演情報 Pityman「ハミングインウォーター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    役者たちが編む強くても繊細な厚み
    以前RAFTでも観た作品ですが、
    今回はRAFT全体の空間をそのまま借景にしたのと異なり、
    演出コンクールの制約の中で、
    必要最小限の美術とともに
    役者達が自らの演技で彼らの空間を作り上げていました

    ネタバレBOX

    冒頭の会話には、観る側を一気に捉える混沌があって。

    そこからのほどけ方や緩急に、
    登場人物たちと、母とさらには父がこの家に置いた空気が生まれ
    観る側を染めていきます。

    RAFTで観たときには、家としての空間があって、
    その上にキャラクターを交差させていく感じでしたが、
    今回は、美術も上手のオブジェと椅子くらいということで
    より役者自身からやってくるものがひとつずつのシーンを支配していて。

    最初は姉妹の我の強さに長男が圧倒されて、
    どこかコミカルであったものが、
    次第に三人の価値観の異なりに育ち、
    口論が生まれ、
    でもそれぞれのつらぬきの先には、乖離ばかりではなく
    家族が普遍的に持つ絆が浮かび上がってくる。

    姉の頑なさと妹の奔放さのぶつかり合い、
    そして長男のどこか達観した感じから、
    それが、混沌に陥らず、キャラクターの距離があからさまに切り出され、
    でも、そこか明確に見えるからこそ、
    それぞれのもう一歩深いところにある
    家族の質感とそれぞれの想いが溢れだし、
    意外なことに、その距離を許すほどに育った
    家族であることの感覚が浮かんでくるのです。

    RAFTの公演時には、観る側がもう少し広い視野を与えられていたから
    描かれる今の印象がより強かったのですが、
    今回はフォーカスがより絞られたことで、3人の歩んできた日々が
    観る側により深く入り込んできて、
    唯一目立った上手のごみ袋を重ねたようなオブジェが、
    彼らが抱く時間の質感を観る側に伝え、とても効果的であったと思います。

    多分、戯曲を読んでも伝わりえない、もっと言えば家族だからこそ共振できるような空気に取り込まれて、作り手の紡ぐ舞台空間の観客への浸出力(?)を実感することができました。

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    2014/03/09 09:05

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