満足度★★★★
この国の体育会
エリカと聞いて、ひょっとしたら、と思っていたら、矢張り神保町の喫茶、“エリカ”のことであった。自分は、小学校時代から古本屋街に通い、当時、隆盛だった「いもや」でてんぷら定食を食べ、古本屋の臭いを嗅ぎ、時に上野に足を延ばして美術館や科学技術館に通う生意気なガキ時代を過ごして以来、何度も神保町時代を過ごしている。編集者時代は無論のこと、ライターとして仕事をしていた時代、フランス語を学びに行っていた時期等々、様々な時期、縁のある町なので、もしや、と思ったのだ。小屋で配られたリーフレットに目を通すと、然り、あのエリカであった。確かに朝6時には開店していると。徹夜仕事開けに飲む珈琲はまた格別。暖かいストーブの焚かれたカウンター席に腰掛けて、余り話さないマスターの温和な表情を見ながら飲む珈琲は至福の時である。実は、弟さんが近くで矢張り喫茶店のマスターをなさっているので、自分は、両方の店に出入りしていた。
ところで、実在のエリカとこの物語は無関係である。エリカの作りは舞台上のものと違うし、窓から外を走る人の姿が見える作りにはなっていない。興味のある方は神保町界隈をうろついて実際のエリカを発見なさるとよろしい。雰囲気のある良い店である。(念のため付け加えておく)