満足度★★
平行して存在する映像と身体
日本大学芸術学部の様々なジャンルの教員とゲストパフォーマーによる展覧会で、チラシには回遊式インスタレーションとなっていましたが、実際には劇場内の客席に座って映像やパフォーマンスを観る形式となっていました。
このアートプロジェクトのプロセスを流す30台のモニターが置かれている劇場へ続く通路を抜けて劇場に入るとステージと客席の間に設けられた「ランドスケープ・エリア」と名付けられた場所に出て、その場所かあるいは客席に降りて、ステージに設置された3面のスクリーン(さらに客席の上空にも縦長の物が2面ありました)に映し出される映像と音響を鑑賞する形で、時折ダンスや朗読のパフォーマンスが行われました。
じゅんじゅんさんは雲が流れる映像の中を掻き分ける様に進んだり、風景の映像が左右に映し出される中で脚光でシルエットだけが見える状態で激しく踊るパフォーマンスを行い、キムミヤさんはカラフルな映像の前や振付の記号譜の映像の前で踊るパフォーマンスを行いました。
寺内亜矢子さんは建築物を撮った写真の幕が下ろされた中でC.R.マッキントッシュの椅子に座ってアインシュタインの『相対性理論』の序文を初めは一音毎の間隔をかなり空けて読み文章として認識させず、次第に普通の読み方に変化して文章がが分かるものの物理学論文なので意味は良く分からないままというパフォーマンスを行いました。
パフォーマンスそのものは興味深い内容でしたが、この展覧会全体の中での位置付けが見えて来ず、散漫な印象を受けました。当日配布されたパンフレットを読むと、イメージが反射しあうのを眺める装置を目指したとのことで、何らかのドラマツルギーを期待すること自体があまり相応しくなかったみたいですが、「装置」としての機能があまり感じられませんでした。