満足度★★
笑えて怖い『砂女』
人がある共同体に否応無く取り込まれていく様を描いた安部公房の名作の舞台化で、アングラ的雰囲気を盛り込みつつ、かなり原作に忠実な作品でした。
昆虫採集のに為にやって来た男が、女一人で住む家に案内され、逃げることの出来ない状況が映像を多用しながら描かれて、アンサンブルの役者達が所々で現れて男が居なくなった世界を見せていました。
新聞が出てくるシーンに絡めて、最近のニュースを読みあげて物語の内容が現在にも通じることを示していたのは説明的に過ぎると思いました。
映像が凹凸のあるセットに対して投影されることを考慮されていなくて、文字が読み難かったのが残念でした。映像の内容はレトロ感を狙ったのだと思いますが中途半端に感じられました。
音の使い方も大袈裟に感じられました。
出演者は多いものの実質は2人芝居に近く、主役の2人は全裸になったり激しい動きがあったりと体を張った熱演でしたが、演技がオーバーに感じられて物語の世界に入り込み難かったです。
女のキャラクター造形が小説を読んでイメージしていたものより、元気な感じで所々で笑いを誘っていましたが、個人的には違和感を覚えました。
『砂男』の主要な役を演じた2人がこの作品でもメインキャラクターを演じていて、別世界に誘い込む女とそれに惑わされる男という関係が重ね合わされていて、時代も国も異なる小説の繋がりが感じられたのが興味深かったです。