女装、男装、冬支度 公演情報 FUKAIPRODUCE羽衣「女装、男装、冬支度」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    FUKAIPRODUCE羽衣のヰタ・セクスアリス
    永遠に降り続く雪を溶かすような、男女の姿。
    やっぱり、歌がいい!  
    FUKAIPRODUCE羽衣の妙―ジカル!

    ネタバレBOX

    糸井幸之介さんは、どうしてこんなに微妙な男女間を描けるのかと思う。
    特に、小学6年生の男子と女子の関係は、愛おしすぎる。

    ダイタ(代田正彦さん)が雪の中に転んで、人型を作って、その型の中に今度はイトウ(伊藤昌子さん)が入る、なんていうのは、ヰタ・セクスアリスの始まりのようであるけれど、そのときの言葉にできないような男子の感情が、痛いほど伝わってきて、「うまいなぁ」と唸ってしまうのだ。

    イトウの無邪気さがさらにそのコントラストを濃くする。
    イトウを演じた伊藤昌子さんはとても好きな女優さんだ。
    明るい表情がとてもいいので、嵐の相葉くんをひたすら想う小6の女の子にしか見えなくなるし、その無邪気さが、イロイロ知り始めている小6の男子にとっては、残酷にすら見えてきてしまう、という空気感がいいのだ。

    対する小6男子の代田正彦さんの、実際の緊張感が逆に小6のようでよかったと思う(演技ということで言えば、少しアレだけど……)。

    このエピソード1つで、この作品は素晴らしいと思ってしまうほどだ。

    ほかにもあと6組のカップルが出てくるのだが、おおむね、バカッぽい(バカっぽく見える)。
    バカっぽいのは、他人から見ているからであって、本人たちは大恋愛の真っ最中なのだ。
    (ピンサロのカップルはそうではないけど)
    それぞれのカップルのそれぞれの事情が語られていく。

    ピンサロのシーンは、日髙啓介さんがとてもきれいに動いて、台詞で笑わせてくれる。
    しかし、その笑いと明暗を分けるように、このシーンは痛い。
    ピンサロのカップルを演じる鯉和鮎美さんが哀しい。
    このシーンの「闇」が濃すぎるのだ。これがあるので、作品全体の奥行きが出たように思える。
    陰りが強いから。

    しかし、折り返し点の殺し合いは、他のシーンと比べてもリアルさが伝わらない。拳銃があまりにも、フィクションとして重すぎるからだ。
    そこは好きではない。

    「性」を軸にして、男女が相対する。
    性抜きでは語れないから、それを語る。
    やっばり、ヰタ・セクスアリスだ。

    別れることで揉めたカップルから、すべてのエピソードに戻っていく。
    すべてのカップルが相手の衣装に交換しながら。
    それが「男と女」を強く意識させる。

    そしてその姿に、「男女は相手と一体になれるのか」と言われているような気がした。
    男女は、単に「男装」「女装」ぐらいのレベルでしか、わかり合えないのかもしれない。

    そう思うと、かなり切なくなってくる。
    情事を墓場で終えたカップルも、バイクで事故ったカップルも、小6の男子女子も。

    小6の男子女子がふたたび歌う曲も、ラストに全員で歌う作品のテーマソングも、戻ってきてからは、まったく聞こえ方が違ってくる。

    それはまた、「それでも、私は相手を愛する」と言っているように聞こえるのだ。

    バイク・カップルの女を演じた浅川千絵さんの、若い女性ならではの、バカみたいな無邪気さがとてもよかった。そのときどきの表情も素敵だ。
    また、島田桃子さんの、ダンスのキレの良さが印象に残った。線が美しい。

    舞台の両サイドにいたおじいさんとおばあさんが、もう少しエピソードにうまく絡んでくれると良かったのではないと思った。

    ラストのミラーボールは「ほお」と思ったが、少しもったいない使い方だなとも。



    帰りにロビーで『サロメvsヨカナーン』のCDを買った。
    このタイトルチューンは、鼻歌で今でも歌える(歌詞のところは、「○○はゾロ目〜」しか歌えないけど)。それぐらい好きだ。
    しかし、もう少し録音何とかならなかったのかなと思う。音質よりもバランスとして。
    再録したら、また買う。

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    2014/02/04 19:56

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