満足度★★★★
強烈な音楽に拮抗する身体
ストラヴィンスキーが作曲したバレエ音楽に新たに振り付けした作品の2本立てで、両作品とも音楽のリズムや雰囲気に対応していて、ストラヴィンスキーの革新的で強烈な音楽に拮抗する圧倒的な身体の存在感が魅力的でした。
『結婚』
オリジナルのニジンスカ版は無表情に踊る群舞が中心ですが、山田うんさんと河合ロンさんのデュオで踊られました。25分間ノンストップで動き続ける中にニジンスカ版を彷彿とさせるムーヴメントやポーズが違和感なく織り込まれていました。
ある男女の結婚の様子を描くだけでなく、人が生まれてから死ぬまでに経験する様々な感情や人間関係が表現されている様に感じられて深みがありました。
使った音源が普通のクラシック系の演奏家ではなく、ロシアの民族音楽の歌い手と打ち込みによる器楽パートによる特殊なバージョンのもので、正確無比なリズムと原始的な歌声の組み合わせが異様な雰囲気を生み出していて、振り付けにマッチしていました。
『春の祭典』
オリジナルのニジンスキー版にある、神への生贄に差し出される乙女というモチーフは残しながら、群舞が人間ではなく獣や虫を思わせる動きでエネルギッシュに蠢くなダンスが印象的でした。
青系の照明が支配的な中、終盤になって黄色に切り替わり、三角形のフォーメーションで密集したダンサー達を不気味に照らし出すのがインパクトがありました。前方で激しく踊るグループと後方でゆっくり動くグループを対比させる場面が何度かあり、強く印象に残りました。
前半で着ていた、沢山の尻尾状の物が着いた衣装は非人間感やダイナミックさを演出していましたが、安っぽいコスプレ的なテイストが感じられ、もったいなく思いました。第2部冒頭の山田うんさんのソロは尻尾の数が他の倍以上ある衣装でしたが、この場面はずっと両手を床に着け続ける奇妙な振付と合っていて違和感を覚えませんでした。