満足度★★★
説得力の粗さ
遅くなったけど、やはり書かなければと思いました。
中林舞が怖くて良かった。芸達者だとつくづく感じたのは一色洋平。演出による瞬間ごとの濃淡はあっても、この俳優が観られて良かったな、という満足感はあった。
ただ、やっぱり脚本における観念的な台詞や、モノローグが気になる。特に最後の、お魚にえさをやるところなど。言いたいことが浮いてしまうというか、どうしても、谷賢一自身が語っているのが透けてしまう。1982年から一年遅れて生まれ、キレる14歳、17歳と常に一歳違いで青春を送ってきた私は、彼らの「あの」呪縛をいつも近くで観察してきた。1982年生まれの作家が、サカキバラ問題とどう距離を取るかは、彼らの自意識との付合い方に等しい。そういう意味でとても「熱い作品だなあ」と思ったし、ああいう内面からの暴力性が沸騰する感じは私にはないので(女だから?とは一概に言いたくないけど、でも無関係じゃない)「これを抱えている人は大変ね」とも思った。その感情をさらっていくような説得力と勢いを持つためには、登場人物のキャラや設定、モチーフの噛合せが粗いのです。