「平成時代劇」を語るにふさわしい見せ場だ
江戸の街は、「吉原」という一大遊廓テーマパークで賑わっていた。
私が観劇した劇場は『BIG TREE THEATER』だから、今のところ、遊廓の中の物語を知らない。なぜかというと、新春本公演は『シアターグリーン』大中小劇場を利用した初の同時上演の試みであり、「吉原」は主に中劇場に相当する『BOX inBOX THEATER』で語り紡ぐ役割だった為だ。それにもかかわらず、私は「花魁の世界を楽しめました」と宣言できるのは一体、なぜだろう?
「たった3分間の 踊り」が その答えである。七人の遊女は いわば、ミュージカル劇におけるアンサンブルだった。黒澤明『座頭市』がタップダンスに求めたのが「男の江戸」だったとしたら、本作は間違いなく、「女の江戸」だろう。
色気が漂うわけではない。官能的なダンスでもない。しかし、一人ひとりの顔は“演劇的に「吉原」を示す”表情だ。このエッセンスは、踊りのテクニックよりも大切かもしれない、と切に感じた。
同時上演の弊害をあげれば、「軸となる役が みえなかった」設計だろう。
もちろん、本来は助六(=木村 延生)が主役であることは言うまでもない。幼き頃、「吉原」へ身売りされた おそめ(=戸島 花)との淡く切ない恋物語…。
ただ、場面数からいうと、最も占めたのは、火消しの安助(=斉藤コータ)本助(=なる)舟助(=荒澤 守)だった。
「三劇場の公演を全て観て下さい!そうすれば分かります!」という誘い水かもしれないが、だとしたら『BIG TREE THEATER』登場回数トップの、彼ら三人組のストーリーを、終盤にかけ じっくり描く選択も あった。花魁を指す。