『駈込ミ訴ヘ』『トカトントンと』 公演情報 地点「『駈込ミ訴ヘ』『トカトントンと』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    『駈込ミ訴ヘ』
    「普通な演劇」とは大きく異なる演出手法で、これだけ惹き付けるのは凄すぎ。

    震えるほど凄い。
    面白い。

    ネタバレBOX

    太宰原作の『駈込ミ訴ヘ』と『トカトントンと』(再演)の2本立て。
    両方とも一人称の小説。
    逆八百屋(手前が高くなっていて、奥のほうが低くなっている)舞台。


    『トカトントンと』は天皇(制)、『駈込ミ訴ヘ』はキリスト教。
    2つの小説が描く内容を、こうして並べて、解体して再構築すると、別の作品であるという感じがしない。
    日本の近代化、近代の日本という視点から考えると避けては通れない、2つが象徴するモノをテーマとしているからだ。

    西洋文明(文化)の象徴たるキリスト教と、戦後日本の象徴となった天皇(と天皇制)。
    結局、どちらもうまく取り込んだようでいて、歪みがある。

    『駈込ミ訴ヘ』ではユダは悩み、『トカトントンと』では私が悩む。
    ユダは訴え、私はトカトントンが脳ミソに響く。
    この2本の作品を2本立てにして、さらに意味を持たせた、あるいは気がつかせてくれた地点(演出:三浦基さん)には、観客としては唸るしかない。

    あえて音楽的に表現するならば、『トカトントンと』はインダストリアル・ノイズ・ミュージックならば、『駈込ミ訴ヘ』はケチャ。
    と、書いて、音楽にたとえるのは違うと思い始めている。
    「音」としての面白さはあるのだが(バリトン歌手を使ったり、ボイスエフェクトを使ったり、舞台を叩いたり、歌ったりしているので)、「意味」が見えて来るとなお面白いのだ。

    とにかく役者の力を見せつけられた。
    舞台に立つ役者が、すべてこのレベルな人たちであれば、演劇はもっと面白くなるのではないか、ぐらいのことまで思ってしまった。

    役者による独特な発音の仕方と台詞との距離感。
    異化(効果)という言葉がふとよぎった。

    リズミカル。どこまでもリズミカル。ボイスエフェクト使った台詞。
    バリトン歌手の登場。
    台詞によるリズムの昂揚と台詞自体の昂揚が一体となっていく。
    台詞の感情とは異なる表現で、笑い、怒る。
    台詞を解体し、数人で分け合ったり、繰り返したり。

    逆八百屋舞台なので、役者がこちらにやって来るときは、頭から見えてくる。
    声の響きももちろん奥と手前ではかなり違う。

    「あの人を、一番愛しているのは私だ」
    「あの人を殺して私も死ぬ」

    『駈込ミ訴ヘ』のラストの「ゆーだー」に震え、賛美歌には心から痺れた。


    地点は、京都に固定的な拠点ができた。
    京都に見に行くしかないか、と少し思っている。

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    2014/01/07 08:27

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