満足度★★★
オーケストラと共に描く苦い青春
オーケストラをステージ上に乗せて、役者と二重写しで描く独特な演出が新鮮なミュージカルで、普通の学園モノに比べてシリアスな内容で3時間近くある作品でしたが楽しめました。
ニーチェを愛読しチェロを弾く、恵まれた環境に育った少年が音楽高校に入ってから次第に挫折を味わい、人生や音楽について悩む物語で、チェロを弾く事を止めてしまい平凡な40代になってしまった主人公が高校時代を回想する形で進行しました。
真っ黒な空間に白いスロープが交差し、奥には軽く湾曲した白い壁、床面の大半はオーケストラが占め、役者は手前のスペースとスロープ上を使う形で、視覚的に少々狭苦しさを感じました。
歌う場面は、主旋律に歌詞を乗せたものと、原曲にはない旋律を新たに加えたものがあり、曲によっては同時に何声もが同時進行し歌詞が分からなくなるものの、モーツァルトのオペラの重唱シーンの様な高揚感がありました。
登場人物を演じる役者と、その役が演奏する楽器を実際に演奏する奏者が対応付け(性別や服装も合わせていました)、出捌けも同じタイミングで行う演出となっていて、様々な感情を立体的に描いていて良かったです。
後方の壁に大きく映し出される場所を示す為の画像(写真を版画の様な感じな白黒に処理したもの)が美しくなく、しかも説明過多に感じられ、時期と場所を字幕で出すだけでも十分な気がしました。
主人公の現在と高校生時代をそれぞれ演じた福井晶一さん、山崎育三郎さんは演技も歌も充実していて素晴らしかったです。ベテラン勢が要所を締めていてメリハリのある流れになっていました。