現在地 公演情報 チェルフィッチュ「現在地」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「私たちはどこにいて、どこに向かうのか」に応える作品
    『ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶』以来の
    チェルチィッチュです。ダンスと演劇の融合をはかったような
    作風は正直、あんまり合わないな、と思っていましたが、
    本作は多くの人に届く言葉と演出に思えました。岡田氏は
    こういうスタイルの方が全然いいですね。

    ネタバレBOX

    それにしても、『現在地』っていうタイトルからしてしびれます。
    英語で「Current Location」。「現在」―「現代」に対する最新
    アニュアル・レポートみたいです。

    「日本」「地球」「コミュニティ」を思わせるような、「村」と呼ばれる場所。
    そこに住む人々は一見平穏に生きているようで、不安や閉塞を抱え、
    生きている。彼らの不安は、青く光る雲や急に吹く風に象徴される。

    その不安は、どうも来るべき「破滅」「破壊」の兆し、それだけでなく、
    その終わりをも待ち望んでしまうような行き場のなさも含んで大きく
    なるよう。

    台詞がすごく響く作品でした。多分、何回も推敲を重ねられているの
    だと思う。登場人物の一人が図書館で遭遇した、濡れそぼって、
    「雨に濡れたら一巻の終わりよ!」と叫ぶ老婆の存在とか、まんま
    「3.11」後の放射能の雨を象徴しているのでしょう。

    このケースに限らず、震災後、人々の心に澱のように溜まった
    感情が、クールなトーンの発話で語られていきます。
    「噂を信じるか」「信じないか」の問いで私が真っ先に
    思い浮かべたこと。それは、Twitter上、現実問わず、多くの噂や
    言葉が飛び交う中で、なすすべもなく翻弄されてしまう人たちの
    ことでした。

    この作品、セリフのほとんどが「~だわ」みたいな形で
    締めくくられるから、演劇、というより、寓話っぽい感触。
    個人的には登場人物の一人が、客席のほうを向いて
    独白した、「あなたたち、私のことを狂っていると
    思っているでしょう…? …もう、ちょっとした次の瞬間に、
    そう思う人はぐっと少なくなっているはずだわ」という言葉。

    村の人々に向けられているのか、客席の私たちに向けられているのか
    分からなくなるような、メタ的な演出で挑発されているように感じました。

    最後の展開って、半年間雨が降り続いた、って言っていたけど、
    確実に旧約聖書「ノアの方舟」を下敷にしていますよね。

    この作品のラストは本当にいいです。
    逃げるにも、留まるにも、可能性を残している、と解釈するのか、結局
    留まっていれば何も変わらない日常が来るのか、それは他者から
    みたら終わってるのも同然なのか。なんか色々な解釈ができそう。

    台詞は深刻なんだけど、音楽や衣装がハイセンスでいい。バックの
    映像も良くって、すごくおおらかで、器の広い作品に思えました。
    とっても安らいで観ることができました。素晴らしい作品だと思います。

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    2013/12/13 23:03

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