満足度★★★★
ヘルメルの孤独
『人形の家』が男性5人の身体表現によってスタイリッシュに演じられ、ノラより夫のトルヴァル・ヘルメルに重点を置いた演出となっていました。
暗闇の中、スポットライトで照らされたヘルメルが拳銃や首吊りで自殺しようとしては躊躇するという、原作のラストの後に続くであろうシーンで始まり、英語でノラを紹介するシークエンスに続いて原作にあるエピソードがヘルメルの回想であるかの様に大胆に省略・変容されながら断片的に連なり、最後に再び冒頭の自殺のシーンが描かれる構成でした。
ノラ役は一応特定の人に割り振られていましたが、自身では台詞を言わずに他の人達が台詞を担当したり、複数の人が同時に演じたりすることでノラの不在とそれに対するヘルメルのオブセッションが表されていました。
所々にコミカルな表現がありましたが、それがただ笑いを取るだけではなく、シーンと次のシーンを繋ぐ役割も兼ねている巧みな表現となっていて良かったです。小野寺さんの得意技である、複数人が物を次々に手渡して行く手法を何度も用い過ぎていて、効果が弱まっている様に感じました。
素舞台の両袖と奥の壁の手前に背丈より少し低い壁が立てられ、バックヤードを作るだけではなく、文字を書いたり、打楽器として扱ったり、多彩な使い方をしていたのが印象的でした。椅子をアクロバティックに重ねてクリスマスツリーやポストを表現していたのも楽しかったです。