満足度★★
音楽家の身体性
善悪が逆転してシニカルに描かれた芥川龍之介版『桃太郎』をミュージシャン2人が演じる50分程度の作品で、役者の演技とは異なる身体性が新鮮で興味深かったです。
ヴォーカルとウクレレの国広和毅さんが主に台詞を話し、コントラバスの川崎純さんは身体表現がメインで、冒頭は演奏付きのリーディングの様な形で始まり、次第に役を演じたり、体の動きで少々抽象的に場面の様子を描いたり、純粋に演奏したりと、様々なタイプの舞台上での身体の在り方が表現されていました。
2人とも普段はミュージシャンとして活動している人なので、演技や身体表現にはぎこちなさがあり、普通に演奏している時の姿に一番存在感の強さを感じました。国広さんの変幻自在の声色や、あたかも踊る様にコントラバスを弾く川崎さんの演奏姿が印象的でした。
横から打つ照明で壁面に大きな影を映し出したり、コントラバスをひもで引き摺ったりするシーンは最初は印象的でしたが、同じ表現が繰り返されるので冗長に感じました。
音楽ライブを期待して観る分には、様々な工夫が凝らされた楽しいパフォーマンスとして受け取れましたが、舞台作品として観ると物足りなさが感じられる公演でした。