SOU - 双・相・想 - 公演情報 演劇ユニット ランニング「SOU - 双・相・想 -」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    改めてタイトル上手い!
    出演者だけでなく作家も演出家も毎回入れ替わるというユニークなユニットで
    第3回という今回は2人の作家による2本立て。
    同じセットを使い、全く違う2つの物語が繰り広げられる。
    コンパクトで、企画と演出の面白さが味わえる舞台だった。
    観終わって、改めて2つのタイトルの上手さに感心した。

    ネタバレBOX

    ①「パンジーな乙女達」作:井保三兎 演出:元吉庸泰

    舞台は段差のある2つの空間に区切られている。
    上手の一段高くなったところはラジオ局のスタジオで
    落ち着いた声の女性が、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」などかけながら
    リスナーからの葉書を読んだりしている。
    ディレクターの男性とADの女性がブースの外で
    25年も続いた番組が今日最終回を迎えたことをあれこれ話している。

    一方とあるマンションには4人の女たちがメールで呼び出されて集まって来る。
    「先生」と呼ばれる作家は、曜日ごとに違う女性をここへ呼んで
    法外とも思える金額を渡していた。
    子どもを抱えた女、親の借金を抱えた風俗嬢、いじめられている女子高生、
    そして路上で詩を作る女…。
    みな作家に声をかけられて週に一度
    ただ食事を作るだけとか、一緒にごはんを食べるだけでお金をもらっていた。

    それぞれの事情が明らかになる中、部屋の奥から作家の死体が発見される。
    自分がやったと打ち明ける詩人の女。
    やがてラジオではパーソナリティの女性が重大な告白を始める。
    「私は夫を殺しました」
    その夫とは、別居しているあの作家だった…。

    作家の謎めいた行動とそれを見守る妻の心理が面白い。
    よくある事情を抱えた女たちの表情もいい。
    ディレクターとADの二人がマンション場面とかぶるシーンが少々わかりにくい。
    場面の切り替えにもうひと工夫あれば
    もっと鮮やかに2つの空間が対比されたような気がする。
    登場しない作家と、その妻の深い孤独が伝わってくる舞台。
    AD役の辺見のり子さん、風俗嬢の江崎香澄さんが印象的だった。
    いくつかあるパンジーの花言葉が、女たちの個性を端的に表していてよかった。

    ②「終末の天気」 作・演出:元吉庸泰

    もう何か月も前から隕石の衝突によって世界は終わる、と伝えられている。
    あれこれ試したが回避は不可能で、ついに明日衝突のその日を迎える。
    地方の高校の演劇部で、最後の稽古をしようと張り切る桃子だが
    部員はちっとも集中しないし、変な不良にはからまれるし、
    肝心の脚本は最後の2ページがまだ作家から届かない。
    学校には他に行き場のない教師やOB達が集まって来ている。
    そしてその時は刻々と近づいて来る…。

    今実在の作家・演出家たちを短く評した台詞がおかしい。
    「柿食う○は力入れて台詞言えばいい」とか笑ってしまった。
    諦めと開き直りの中、ひとり奮闘する桃子(藤桃子)が健気。
    作家と演出と主演、3人でてっぺんを目指そうという決意が初々しい。
    遠く離れてしまった作家の星耶と“交信”する姿に信頼と情熱が伝わってくる。

    ちょっと同じところをぐるぐる回っているような印象を受けたのは
    似たような台詞が繰り返されるからか。
    もっと劇中劇でドラマチックに語らせても良かったと思う。
    最後の日に学校を掃除する西川先生(西川智弘)のキャラが面白そうだったので
    もっと演劇がらみのエピソードが聞けたらより深みが増した気がする。
    最後の日に演劇人が何を想って学校に集まったのか、
    演劇部が舞台なのだからその理由を演劇に集中してもよかったと思う。
    その結果の”屋上集結“もきっと素敵だ。

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    2013/11/22 04:49

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