ニッポンヲトリモロス 公演情報 劇団チャリT企画「ニッポンヲトリモロス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鈍感さを感じさせる鏡
    おもしろいし、描くものの意図はなんとなく伝わってくるのですが、
    どこかフォーカスがぼやけていて、
    妙に薄っぺらく、具象するものもぴりっと伝わってこない。

    でも、ラスト近くに引っ張り出されてきた
    物語の構造の屋台崩し的な展開に
    舞台が翻るのを感じ、
    それを漫然と眺めていた自らの感覚にぞくっとなりました。

    ネタバレBOX

    2020年、オリンピックがもうまじかに迫る東京のホテルのロビーが舞台。
    そこに、現状の日本のから想起しうる、今とさして変わらない近未来の風景が織り込まれていきます。
    そして、その裏には、かなりあからさまに、あざとく、日本の現状の比喩が織り込まれていて、
    ホテルの部屋番号と福島原発の炉のナンバーが重なり、雨漏りは急場しのぎの汚染水対策が続いていることを思わせる。さらには、国情というか、阿部首相の3本の矢の奪われてしまうことや、中国人客ばかりのホテルの予約や、旧態依然としたつっぱり(懐かしい)たちの登場や、魔女の宅急便で届かない、コスモクリーナーから浮かび上がるこの国のありようがあって。ただ、舞台の置かれたそれらの表現自体が、どうにもベタで、芯がなく、主張もなく、どこか安っぽいコントのごとくなげやりに思えてしまう。

    そしてその展開もじんわりとゆるい・・・。

    でも、終盤で懐かしい『8時だよ!全員集合』の場面転換(前半のコントのラスト部分)の音楽が流れ、舞台の混乱を笑いながら、家で毎週見ていた番組のことを思い出すと、すっと、スマホのカメラの内外が逆転するように、視点が翻り、その世界を見ている自分の姿へと変わるのです。
    次第に破壊的になっていくさまざまなことに収集がつかなくなっていくなかで、
    「だめだ、こりゃ」とその場をまるっと収めてしまうに舞台には薄っぺらさを感じてしまうのですが、
    でも、結構洒落にならない現実を、ただ、物足りなさとともに眺める自らに、
    ドリフにマンネリ感を感じつつ、どこか惰性で、でも結構楽しみにテレビを見ていた自分の記憶がかさなると、描かれた先にあるシリアスな日本の現実を受け取ることとは明らかに異なる感覚に、浸され慣らされた自らへの視座が現れ、そこに胡坐をかいてこの国の様々なありようを「お茶の間」感覚で見ている己が姿に愕然とする。
    様々な出来事に慣れ、ニュースや社会的な事象を、際立ってシリアスなこととして眺めることも心を深く揺さぶられることもなしに、ブラウン管(有機ELなどではなく、どこかぼやけている)の中の出来事のように感じ始めている自らや多くの人々のありように思い当たって。

    作意がいまひとつ舞台に明確でないので、私が深読みしすぎているのかなぁとも思うのですが、大変なことになっている様々なことを、ドリフ的なエンディングに取り込まれたこの舞台の如く日常のルーティンとして深く興味を抱くことなく受け取っているその感覚のリアルさに、ゆっくりと深く捉われたことでした。

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    2013/10/28 15:06

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