「歌舞伎•コメディ ミュージカル」の初期型か…
「音響さん」要らずの舞台だったのではないか。
枕に挨拶する幸村晋也によれば、「身体では表現できない効果音」が あるという。
「雨つゆ」の効果音さえ、観客に代行させた。風鈴の機能が付いた団扇を、スペシャルゲスト•今拓哉 の指示で扇ぐ。
一見すると、「観客参加型」のゲーム感覚のように思えるが、実は時代劇の“音•風•香”を意識した細かい演出だろう。
「生の音」を守る姿は、今朝ニワトリが産んだばかりの卵を大切に扱う、少年のような純粋さだった。
『見上げたボーイズ』の「五人衆」は再々演だ。
江戸の時代劇と ミュージカルの融合は、ともすればジャンルとして理解を得にくい。
だが、歌舞伎の技法をとりいれた形と、ミュージカル(唄う)部分は 、まるで夫婦漫才のように互いを補強し合ったのである。
なにが現れたのかというと、「これぞ!エンターテイメント」の光景だ。
ミュージカルに限っても、五人のキャストが同じ役割を担っているわけではない。
福永吉洋が、その30%以上を唄ったのではないか。
見事である。
役柄は三枚目だ。
それを裏切る美声、マイクなど必要ないだろう声量…。
彼を知らぬ観客は初め、自分の耳を疑った。
中盤以降、三味線や和太鼓の生演奏が減ったのは、噺の内容に持って行きたかったからだろう。
観客を使う効果音=「ザーザー」も聴こえなくなった。
だが、むしろ殺陣のシーンにおいても、それに符合した緊迫感のある三味線、太鼓の演奏をすればよかったのだ。
そうした意味では、「生演奏」の強みを活かしきれず、再々演の「安定」を求めた構成を感じる。