満足度★★
不条理劇でも・・・
物語の構成が「作家、フジタタイセイさんの失踪から始まる」、これがテーマにもなってるそうだが、同行した家族がフジタさんのツイッターのフォロワーで、いつも「死にたい」とか「消えてなくなりたい」とか心配なことばかり書いてるし、この数日、ツイートもボット化し、配役表の名前が消えてたし、本当に失踪したと思い込んだ。
家族は真面目な性格なので私がフィクションだと説明しても信じてくれず、「嘘や冗談であんな不謹慎なこと言うはずない」と帰路、口論になり、とても後味が悪かった。
劇場を出て心配なのですぐフジタさんにDMまで送ったそうである。
家族には最後に出てきた釣りの男がフジタさんだとわからなかったのだ。顔がよく見えなかったので。
作者の狙いはわかるが、それなら劇を観てる間だけの「嘘」でよいのではないだろうか。
口上で「どんな些細な情報でもかまいません。何かご存じでしたら、終演後でもけっこうですから受付のものにお知らせください」とまで言うということは失踪を信じ込ませたいから言わせたのだろうが、ちょっとやりすぎに感じた。
そこまで言うなら、せめて千穐楽には最後に出てきて「失踪は劇中のことです」と挨拶してくれたらよかったのに。
フジタ氏を応援している家族が観たいと選んだのでしかたないが、こういう演劇にあまり慣れてない人には不向きだった。
「牡丹燈籠」と「真景累ヶ淵」をないまぜにしているが、人間関係が入り組んでいるし、原作を知らない人もいるので、簡単な説明くらいパンフにつけたほうが親切だし、一段と理解しやすいと思う。それで、この作品を損なうことになるとは思えない。
興味があればググればいいということだろうが、最近はちゃんと資料をつける劇団もある。
不条理劇仕立てにしたから謎が多ければよいというのは独りよがりに思えた。
テンポは悪くないし、原典をよく知っているものにはそれなりに楽しめたが、もう少し客のほうに歩みよって作ってもよいのでは。