満足度★★★
池の中の野外劇
寓話的な物語を多彩な手法を用いて描いた作品で、野外劇ならでは開放的な空間を活かした演出が楽しかったです。
妻が亡くなって自分も死にたいと思っている老人と、昔その老人に助けられ願いを叶えようとする狸と、死を思い止まらせようとする猫の物語で、ごまのはえさんならではの原始的なまがまがしいさが薄く、ライトなテイストでした。
想像していた程には「多摩」や「ニュータウン」を強調していなくて、物語としては上演場所との繋がりがあまり感じられませんでした。
池の中にT字型に張り出したステージ、その周りに11台のブランコ、下手にはドラムや打楽器が配置されていて、ステージ上で演じる場面は少なく、大半が池の中で水を撒き散らしながら展開し、ダイナミックでした。
山が切り崩される様子を池の奥にある林にショベルカーのシルエットを映し出して表現したり、池を囲む列柱にプロジェクションマッピングをしたり、夢の世界を表現するのに面状に噴き上げられた水の膜に映像を投影したりとスケールの大きい映像演出が素晴らしかったです。
被り物や人形のクオリティーが高くて良かったものの、対照的にいくつかの小道具が安っぽく見えたのが残念でした。
主人公の老人を演じた茂山童司さんの狂言特有の声色や台詞回しが印象的で、狂言や歌舞伎を模したシーンに映えていました。