「リセット」 公演情報 Ar-Style「「リセット」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ガイア
     チームペガサスを拝見。朗読劇とされているが、シナリオの構造をしっかり掴んだ演出で演劇的に楽しめた。

    ネタバレBOX

     創世記に登場するソドムとゴモラの話がナレーターによって説明され、神或いは超自然的な存在が暗示される所から始まる。語り手は2060年を生きている男、この物語で語られる2013年に生まれた。
     2013年のある日、ある時を境に、人々は記憶を失った。といっても総ての記憶を失くした訳ではない。自分自身の名前だとか、住所、関わりのある人々など、アイデンティファイに必要な記憶を失ったのである。或る者は、買い物の途中で、或る者は、道路の横断中に、又或る者は、会社の所用で出掛けた先で、また勤務中の交番で等々、その状態は様々であったが、総ての人が、その時以来、ある分野の記憶を失くした。携帯端末を持っていた人々は、取り敢えず登録してある人の電話番号に掛けて見る。ところが、自分の名を名乗ることもできなければ、電話を受けた側も自分が誰であるか分からない人もいる。何とか名刺や写真付きのIDカードなどから、自己確認をした人もいるが、混乱は、甚だしく公共交通機関は総てストップ。タクシーなどを除いて足が無い。仮にタクシーを拾えて、運転手が道を覚えていても、肝心の行く先を言えない乗客が、自分の家では無く、名刺に書いてあった会社に車を走らせるなどという状態である。
     そんな状況の中、町交番の警察官が、警察手帳と自分の服装から自らが警察官であると考え、地域の人々に援助の手を差し伸べようと、掛かってくる電話で相手の不安や、困惑を聞き、相談にのったり、苗字と名前が分かる人には住所を突き止めたり、とできるだけのことをしている。
     更に、地元のFMラジオ局のメンバーたちは、兎に角、自分達でできることを、できる所迄やろうというパーソナリティーの提案に従い、刻々の状況を集められるだけ集め、発信してゆくと共に、リスナーの心を平静に保つ為に、音楽を流しながら番組を進行してゆく。電話などによるリスナーからの問い合わせにもリアルタイムで答え、オルタナティブに番組を編成している。個々の情報は、町中の混乱状況や、この混乱の起こっている地域が世界中であること、海外の状況、例えば殆どのエリアで暴動が起き、略奪などが横行していること、アメリカでは、銃の乱射が多発、死傷者が多く大事になっているが、それに比べると日本は、まだマシと思われることなどである。無論、日本でも多くの店舗がシャッターを下ろしているが、食料品店は開いている所が多い。但し、値段は異常な高値で蜜柑1個千円などというレベルだ、云々。また、一人暮らしの女性宅を襲うオレオレレイプなども多発しているので注意が必要というニュースが流されたり、リスナーからの夫を探して欲しいとの要求に応えて、オンエアしたり。また、これもリスナーからの情報で桜が満開になって大変な人出で、ヌーディストグループ迄現れ、大変な賑わいを見せているとの情報に現場からの実況放送をしたりと大活躍。この其々の挿話に対して、様々な曲が選ばれ流されるのだが、話の内容と選曲のマッチングが素晴らしい。
     こんな具合に人々は、自分のできることを精一杯やっているが、記憶を失ったのは、意識の固まった年代の人々だけで、新生児に関しては、記憶は元のままだ、ということも発見される。また、記憶を失いながらも何とか人間らしく生きたいと望む人々は、記憶を回復させる為に図書館へ行って、今ではロールシャッハテストの文様のように、何だか意味の分からなくなった図面や文章を、頭痛や吐き気を堪えながら見ていた。
     記憶を失った原因については、赤い光が自分達を覆ったことが原因と考えられた。然し、誰が、何の為に、人々の記憶を奪ったのかいついては、謎のままである。
     暫くの間、こんな状態が続いたが、或る時点を境に、人々の中に記憶を取り戻す人が出て来た。彼らが思い出したこと。それは、小惑星群が地球に衝突し、地球が消滅するという危機であった。その恐怖から逃れる為に、人々は、記憶を喪くすことを選んだのだと。そして、それは、恐らくガイアなど超自然の意思なのだと示唆される。
     この事に気付く人が出始めた頃、小惑星の衝突が始まる。人々は、再確認できた自分の周りの人々と共に最後を覚悟する。その心の奥底にあるものと共に。そして、地球は、小惑星群の衝突の最中、消滅ギリギリの所でリセットされ、人々と生きとし生ける総てのものが、リセットされて明日への道に立った。

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    2013/09/23 12:52

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