「矢口真里 不倫騒動」は一ヶ月前に始まっていた
「不倫騒動」で連日、スポーツ紙や週刊誌の紙面を覆いつくし、ワイドショー番組のVTRに出演し続けた元モーニング娘。のリーダーは?
こう取材陣から問われたとすれば、有楽町駅前の広場にいる歩行者全員が 「矢口真里」の名前を語り出すだろう。
私が「不倫騒動」以前で彼女を目撃したのは、一ヶ月程ばかり遡らなければならない。
もちろん、「芸能リポーター」として彼女の様子を見ていたわけではなかった。
「東京グローブ座」の座席にいる一人の観客として、「矢口真里」の演技を、歌唱を見ていたのである。
『イキヌクキセキ』という3.11後の10年後を見据えた舞台。
津波により両親を亡くした少女は、あの揺れを経験して10年の歳月を経て、中学生を迎えた。
「里親」の家庭では自ら礼節を重んじるものの、“父親”“母親”と打ち解けることは できないままだった。
そんな“娘”を、未だ東日本大震災に沈む“両親”は不安そうな眼差しで見守っていた…。
「朗読」でしか築けない、そういった舞台は 存在する。
微妙なアクセントや、役者が入り込むコンテンツ性において、「朗読」には力がある。
実際、亡き旦那と指輪を無くした口論をぶり返すシーンは、非常な怒り の感情を抱えていた。
そして、終盤に掛け、矢口真里の涙がポツリ、ポツリとステージの床へ落ちていく。
“娘”への温かい感情も そうだが、
東日本大震災を被災し離れてしまった旦那への“愛情”と、その“無念”が純水を額に辿らせた原因に違いない。
私は感情移入によって流れた矢口真里の純水に対し、ある意味では視野の狭い、思いもよらぬアクションを取る一途な女性を感じ取った。
マイナス•イメージのみで こうした評価をしたのではない。
誇るべき一面だろう。
その約一ヶ月後、彼女は私が芸能リポーターの素養を備えていることを証明した。
「思いもよらぬアクション」をしでかした結果、生放送番組を事実上降板したのである。
劇中の主題歌が思い出されよう。
『恋におちて-fall in love』
女の不倫をテーマにえがいた、90年代初頭放送のTBSドラマ主題歌。
「ダイヤル回して、手を止めた」
彼女は手を止めることなく、頬を流れた純水を口に含み、思いもよらぬアクションに出た。
私は、ただただ「朗読劇」の力を知った。