満足度★★
散漫な印象
イサム・ノグチの幼少期、戦後の活躍期、そして現代が断片的に絡まり合いながら展開する物語でしたが、ストーリー的にも演出的にも大きなテーマに向かって収束しないまま終わってしまった印象を受けました。
月・飛行機・数字といったモティーフを巧みに関連させてはいるものの、90分間の上演時間は3つの時代を描くには短くて、各エピソードが並列的に提示されているだけで、そこから先の発展があまり無く、物足りなさを感じました。
各時代でイサムと関わる女性達に重要な役割を担わせようとしている割には描写が浅く、葛藤や愛情といった心情があまり伝わって来ませんでした。
一つの時代に絞って丁寧に描くか、あるいはもっと断片化してイメージの連鎖として表現した方が良いと思いました。
立体的な白いセットを照明と映像で変化させてスムーズに場所や時間が切り替わり、スピード感はあったものの、BGMや環境音が常に流れていたり、場面毎に背景をセットに映像で投影したりと説明的な情報が多過ぎで、観客が想像する余白が残されていなくて息苦しさを感じました。
音楽はミニマル・ミュージックや実験的な電子音楽をメインに用いていましたが、作品の内容からすると人の温かみが感じられるアナログ感のある音楽の方が合っていると思いました。
映像はプロジェクションマッピング的なこともしていましたが、一瞬目を引くだけで、それ以上の効果が感じられませんでした。
役者の演技はそれぞれのキャラクターがしっかり立ち上がっていて良かったのですが、脚本や演出が演技を活かしていなくて勿体ないと思いました。