Re:一万個 公演情報 チームまん○(まんまる)「Re:一万個」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    恥ずかしがり屋さん
     劇団名からして、擽りの入った下ネタと楽しさの入り混じった劇団なのだが、下ネタを標榜しても決して厭らしさに堕ちないのが、この劇団の特徴だろう。無論、それには訳がある。

    ネタバレBOX

     今作は、社内の若く可愛い女性と妻のある若い夫との浮気をメインストリームに、夫の子を産みたいのに、ひょんなこと(本能対理性、即ち社会的束縛≒義理)の葛藤から勃起しなくなった夫を心配する妻をサブプロットに据えて、妻の不安(女性としての魅力に欠けるのではないか? 飽きられたのではないか? 等々)からダイエットをしたり、食事の栄養バランスを考えて料理を工夫したり、精神科へ付き添ったり、その他細々とした日常のケアを描くことによって、女性の在り様のシリアスな部分を描き、日常性に寄り添った視点をさりげなく表出している。
     一方、勃起しなくなった夫に関しては、脳からのパルス伝達系、食べ物と栄養素と性的器官との関係、興奮と諸器官との相関関係を始め多くの医学的知見を盛り込みながらコミカルに仕立てている。この方法によって、男性優位社会は完全に相対化され、女性と対等な人間レベルに観客の想像力は誘われる。
     これらの手続きを踏んで、終盤、勃起し掛かったペニスが、萎えてしまうシーンへ繋がるのだが、ここで、登場する総てのキャラクターが応援する祝祭的空間が紡ぎだされているのは、偶然ではない。寧ろ、演劇の原点としての祝祭のエネルギーを表現していると捉えて良い。本来、民衆を巻き込んだ祝祭的エネルギーは行儀の良いものではない。寧ろ、カオティックで猥雑なそれである。それが、原初の形で提示されているのだ。だから浮いていないのである。これが、この劇団が、決して厭らしさに堕ちない理由であり、寧ろ、人々の和やかで睦まじい関係を描くことを理想とする恥ずかしがり屋の微笑ましさであろう。温かい劇団である。

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    2013/07/29 04:40

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