カタルシツ『地下室の手記』 公演情報 イキウメ「カタルシツ『地下室の手記』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    自分の人生の主人公になれない人
    イキウメの番外公演(?)、カタルシツの第一回目は
    あのドストエフスキーの『地下室の手記』の戯曲化!

    原作は実は未読なのですが、骨子をそのまま現代版に
    移植したという本作見る限りだと、かなりイタい人の話
    だったんですね…。現代に通じ過ぎててかなり怖い(笑


    ネタバレBOX

    主人公は、40歳を迎え、母親の遺産を手に、日がな地下室に
    こもりっきりの自称「文筆家」。といっても、著書は一冊も無く
    評論を書いているブログも廃墟状態だそうなので、実質無職。

    そうなる以前は警備員だったそうなので、警備員から「自宅
    警備員」に移ったわけですね? と、突っ込んでみたくなります(笑

    その男が、ニコニコ動画の中継動画(で、ひたすら自分の
    過去を「カタル」、というのが、ざっくりとした内容。

    端的に言うと、「自分の人生の主人公になれなかった人の話」で
    話はやたらと小難しく、自分がいかに他人と比べて思慮深いか、
    優れているのか、周りがカスなのかを延々と語る。

    でも、住んでいる家では、母親に家事の一切を任せ、ほとんど
    社会との接点が無い仕事をしているため、コミュニケーション
    不全者に限りなく近い。出来ること? 全くなし、です。

    無理やりに参加してきた同窓会では、最初空気扱いされ、そこで
    めげずに、君らの人生、意味なんてねえ! 的な語りを入れた結果、
    ワインをかけられ、殴り倒され、ヘタれる。その上、会場代金が
    払えず、逆にクリーニング代5万円を恵んでもらう情けなさ。

    その後、一発かましてやるぜ! とシャドーボクシングまでして
    待ち構えた風俗街には同級生は誰も来ず、何故か、ひょんな
    流れでソープ嬢にお相手してもらうことに。

    そこでも、ソープ嬢に説教かまして揉めまくって、住所の書置き
    残して去っていく。で、ソープ抜けしたいので手伝って! って
    頼みに来たソープ嬢から散々逃げ回った末、

    なんかいい感じになっちゃって、関係しちゃった後、上機嫌で
    今日は帰るね♪ と去っていこうとしたソープ嬢にお金握らせて
    激怒させて、その後、部屋で男泣きして、彼女を追い求めるも
    既に遅く… で、今のヒッキー生活。この格好悪さ、そしてそこに
    言い訳するから、さらに泣ける。

    後半が、えぇ、そんなことしちゃうの、言っちゃうの? の連続で
    観てて思わず頭を抱える展開がてんこ盛り。この人の話を聞くと、
    自分が特別で優秀な人間だ、という妄想と自意識だけが過剰に
    膨らみ続ける生活から脱出したいのに、抜けられない悔しさと
    後悔、そして諦念が入り混じっていて。悲哀がにじむ。

    人生唯一の重要な選択肢、ソープ嬢の申し出をあそこで
    無下にしなければ…というのが伝わってくるので、なおさら
    きっつい。孤独に暮らす、って、色々な意味で難しい気がする。

    とにかく、過剰なまでの自分すごい! が逆に爆笑を誘い、そこに
    背景のニコニコ動画のコメントまで被さってきてすごいことに(笑
    これから女の話を始める! とか言っておいて、延々独白演説をする
    男に、「女の話マダー?」とかコメントかかっているのに笑いました。

    この話の教訓は一つあって。酒席の、あるいは酒の入った男の
    話は盛っているので一切信じず、はいはい、って聞き流して
    あげること。これですね(苦笑 お酒入ると、格好いいこと
    言うんだけどね、この人。実行と行動が伴わない、どこにもいそうな人。

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    2013/07/27 09:38

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