七月花形歌舞伎 公演情報 松竹「七月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    こってりと面白い、鶴屋南北の名作
    主君の仇を討つ『忠臣蔵』の裏ストーリーという設定で、さらに「仇を討つ」(と復讐)が、キーワードとなる怪談話。

    染五郎が民谷伊右衛門を演じ、菊之助がお岩を含め3人を演じる。

    ネタバレBOX

    染五郎が民谷伊右衛門を演じ、菊之助がお岩を含め3人を演じる。

    お岩と無理矢理実家に連れ戻され、お岩の父親を説得してよりを戻そうとする伊右衛門だったはずなのに、産後の肥立ちが悪いぐらいでお岩対して冷たい態度をなぜとるのか、というところがイマイチ伝わってこない。
    もともと伊右衛門が悪い男だということはわかるのだから、いかにも見た目はいいが悪い男であるように、最初から演じてほしかった。
    したがって、伊右衛門を見初めた隣家の伊藤家の策略を、これ幸いと乗ってみせる悪ぶりも、もっとほしい。

    染五郎の伊右衛門が、さらにどす黒く見えてこないのが残念。
    名台詞「首が飛んでも動いてみせるわ」は、力が入り、いいなとは思ったのだが、全編このエネルギーを悪いエネルギーとして見せてくれていたら言うことはなかった。
    もちろん、お岩を立てるという意味もあろうが、伊右衛門がくっきりしないとお岩も引き立たない。

    対して、お岩を演じた菊之助は良かった。毒と知らずに薬を飲む場面は、鳴り物はまったくなく、白湯を取りに行き、大切な薬を大事そうに丁寧に飲むという一連の仕草は、無音で長い場面にもかかわらず、観客は固唾を飲んで見ていた。
    それほど見事だった。
    毒を飲まされた後の髪をすく場面もよかったし、控え目な貞淑さもよく、伊右衛門の非道さがくっきりして見えた。子どもを思う母親の心情もいい。
    また、菊之助が三役演じるうちのひとつ、佐藤与茂七のすっとした感じもなかなかだ。

    出番は少ないものの、直助権兵衛を演じた松緑の台詞のタイミングの良さは気持ちが良かった。

    戸板返し、仏壇返し、幽霊の宙乗り、菊之助の早変わりなど、見せ場が多く4時間超がまったくだれない。
    幽霊が出てきてから、もっとこってりと怖がらせるのかと思ったが、思ったほどでもなかった。

    歌舞伎座では30年ぶりに演じられるという、大詰の「滝野川蛍狩の場」は幻想的で、「本所砂村隠亡堀の場」と「本所蛇山庵室の場」という、お岩が祟るシーンの間にあり、とてもいいクッションになっていたと思う。これはやはりあったほうがいい場ではないだろうか。

    0

    2013/07/26 08:17

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大