女郎蜘蛛【全公演終了しました!ご来場ありがとうございました!】 公演情報 声を出すと気持ちいいの会「女郎蜘蛛【全公演終了しました!ご来場ありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    君臨してほしかった
    山本タカさんが演出した劇団鋼鉄村松の「けつあごのゴメス」を観たとき
    こてこてテイストをスタイリッシュに仕上げるセンスが素晴らしかったのだが
    今回は元の本がすっきりしているせいかスタイリッシュにしたら薄味になった印象。
    でも集団の動かし方、緊張感を呼ぶ声を重ねる演出は効果的だった。

    ネタバレBOX

    舞台中央に3畳ほどの畳の部屋、ここが秋葉原の耳かき専門店になったり
    刺青の彫り師の仕事場になったりする。

    みなみ(穂高みさき)は耳かき専門店の売れっ子従業員。
    生活のため、家族のため、と嫌な客でも我慢して働いている。
    次第にエスカレートしてくる勘違い客タカハシ(國重直也)から逃れたい一心で
    みなみは同僚から聞いた刺青の店を訪れる。
    そして彫り師(草野峻平)から「お前の本性は男を喰う女郎蜘蛛だ」と言われるまま
    背中に女郎蜘蛛の刺青を彫ってもらうため通い始める。
    そしてこれまでの弱い自分ではないと、タカハシに「もうこれ以上無理」と告げる。
    逆上したタカハシはみなみの家へ押し掛け、祖母とみなみを殺してしまう。

    実際に起こった耳かき店殺人事件と谷崎潤一郎の「刺青」をドッキング、
    秋葉原の無差別殺人事件も絡めて“コミュニケーションに病む”心を浮き彫りにする。

    タカハシの“コミュニケーション下手”なくせに“思いこみだけは人一倍”という
    典型的な勘違い男ぶりがリアル。
    検察官や弁護士の問いかけに対しても都合の良い解釈を展開して
    どこまでも自分のことしか考えない困ったちゃんぶり全開だ。
    あーいるいるこういう奴…と思わせる國重直也さんが上手い。

    ちょっと残念に感じたのは様式美を体現する彫り師の影響が薄いこと。
    あれだけ大仰な台詞と動きでみなみを説得して女郎蜘蛛を彫ったのに
    肝心のみなみの変化がほとんど見られないので、彼のカリスマ性が失せてしまう。
    刺青のビフォー・アフターの変化を、様式美でケレン味たっぷりに見せて欲しかった。
    小さな声で客に「もう無理…」と告げる程度では彫った甲斐がないではないか。
    さっさと8本の脚を仕上げて、出来上がった彫り物に憑かれたように
    君臨してタカハシを喰い物にするみなみが見たかった。
    その挙句に殺されて初めて、その死に方も含めて「女郎蜘蛛」な気がする。

    アフタートークのゲスト、劇団鋼鉄村松の主宰ボス村松氏が面白かった。
    ボスが「彫り師、間違ってるじゃん!」と指摘して客席から笑いが起こった通り
    男を喰う前に殺されちゃった感が否めない。

    みなみ役の穂高みさきさんに、彫りの痛みに耐えながらも変化していく
    女のふてぶてしさや毒気がちらりとでも見えたら良かったが
    ちょっとイメージが清純過ぎた印象。
    それと、やっぱり美しい蜘蛛の彫り物が見たかったな。
    遠山の金さんみたいにきれいなやつ。
    だって彫り師が精魂こめて彫ったんでしょう?

    客入れから劇中の選曲のセンスもいいし役者の出ハケを自由にする演出も良かった。
    様式美とスタイリッシュな感覚の対比も面白い。
    複数の役者が声をそろえて台詞を言う演出も、緊張感と暴力的な強さが出て好き。
    24歳の山本タカさんが次に何をするのか、私はやっぱりコエキモが気になる。

    0

    2013/07/22 02:24

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大