満足度★★★
二面性と軽薄さ
19世紀の上流階級を舞台にした小説を、現代のファッション業界に置き換えてダンス作品としたもので、意図的に演出された(?)ダサさがセレブリティ達の軽薄な雰囲気を皮肉っている様に感じました。
ファッション・フォトグラファーのバジルとファッション誌編集長のレディH(原作では貴族の男性)に見い出されたドリアンがモデルとして売れっ子にるものの、快楽に身を任せた生活を送った末にバジルを殺し、更には自身のドッペルゲンガーを殺すことによって自分も死んでしまう物語が、派手な音楽と照明を伴って描かれていて、台詞が無くてもストーリーが分かり易かったです。
具体的な動きが多く、接触の多いエロティックな振付で、男性デュオならではのダイナミックなダンスが印象的でした。
回り舞台の中心に大きな壁が設置されていて、片面はフォトスタジオを思わせる真っ白な空間、反対側は錆びた鉄の骨組みで、ドリアンの二面性を象徴していました。
ドリアンがイメージモデルを務めるブランドの名前が『IMMORTAL』(しかも終盤では看板に書かれていた最初の2文字が消えてしまう)だったり、原作でドリアンが恋する、『ロミオとジュリエット』を演じる女優が男性バレエダンサーに置き換えられていて、プロコフィエフの同名のバレエ音楽で踊ったり、原作を知っていると更に楽しめる趣向がバランス良く盛り込まれていました。マシュー・ボーンさんと同じイギリス人のダミアン・ハーストやフランシス・ベーコンの絵をさりげなく引用していたのが洒落ていました。
ゲイ的な表現で良くある、露悪的に古臭くてダサい感じに演出する表現が中途半端に感じられました。もっとビザールな感じが欲しかったです。R15指定の割りにはそれほど表現が激しいとも思いませんでした。
残響の長いクラシック用のコンサートホールでの上演だったせいか、ビートの効いた大音量の音楽の音像がぼやけていたのが気になりました。一番最後の音も綺麗にフェィドアウトせずに途中で切れてしまったのが残念でした。