満足度★★★★
様々な感情を刺激する家族劇
田舎町に住むある家族の半年間を描いた物語で、良くありそうなホームドラマ的内容でありながら、予定調和に留まらない硬軟のレンジの広い展開と充実した演技によって3時間半の長さを感じさせない作品でした。
第一幕はプロジェクションマッピングや照明を効果的に用いた演出に魅了され、第二幕はそのような効果をほとんど用いない、戯曲と演技の求心力に引き込まれました。
第一幕のラストが雷の鳴る中を半狂乱で盛り上がるシーンが単純に楽しいだけではない深い情感を醸し出していて、美しかったです。終盤はシリアスで険悪なシーン、温かくて感動的なシーン、ドタバタのコミカルなシーンが矢継ぎ早に展開し、感情を激しく揺り動かされました。
タイトルの「闇」が精神的な意味から物理的な意味にも拡がり、さらに終盤で良い意味で見い出される構成が素晴らしかったです。
三姉妹がメインに描かれることからチェーホフの『三人姉妹』か連想され、実際オマージュ的な場面もあり、人が死ぬシーンを直接見せずにシルエットだけ、あるいは字幕だけで表現するのもチェーホフ的でした。
3人の客演の役者達を殊更に立てようとせずに劇団員と対等に扱うことによって緻密なアンサンブルが組み上がっていて、各キャラクターがリアルに感じられる魅力的な芝居となっていました。