満足度★★★★★
脚本が素晴らしい
正直、評価が難しいです。(★5は脚本に対するものです)
優れた脚本(言葉)があり、それを演出・演技で舞台化していくという極めて古典的(新劇的)な在り方の芝居。
これは、脚本自体に依るものか、演出や演技に依るものかはわかりませんが、役者の身体や演技よりも、言葉が舞台の中心にある。舞台は言葉で満たされている。
そういう芝居が(も)好きだ、という人にはとてもお薦めですが、
個人的には、3時間の芝居を、言葉に意識を集中させ続けるのは辛かったです。
ですが、逆に言えば、それだけ優れた脚本、言葉の強さであったという証拠。
これだけの強い批評意識を持って、歴史モノを再構築できる力量は凄いことだと思いました。それも、過去を扱いながら、現在の社会を問うている。憲法が改定されるかもしれない、国防軍さえ作られるかもしれない今日の社会状況下で、この作品が上演されることの意味は大きい。このような批評意識の強い作家は現代では稀有であり、とても重要な存在だと思います。
また、女性の脚本家だけあって、女性に向ける視線、特に主人公の妻〈大星ゑい〉への視線が強く印象に残りました。私の中では、彼女が主人公なんじゃないかとさえ思われる位に。その点も素晴らしかった。
文学作品のように舞台を(脚本を)考えるなら、とても力があり、本当に素晴らしい作品だと思いました。
ですが、もう一方で、ならば文学として脚本を読めば良いのではないかとも思ってしまいました。
ただ、私が観たのが「プレビュー公演」だったために、舞台としての強度が完全には高まっていなかっただけなのかもしれません。