期待度♪♪♪♪
みたい『サロメ』もいいけど,こちらのオスカー・ワイルドも期待してます。
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2013/07/03 13:06
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2013/07/10 06:07
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ドリアンとシビル・ヴェインの恋は,身分ちがいの恋だけなのだろうか。ドリアンが愛したのは,シェークスピア劇のロザリンド,つまり男装した美少女だったともいえる。ここで,ジェンダーがあいまいになっている。ドリアンのキスによって,シビル・ヴェインは,シェークスピア劇の世界からも目覚めると同時に彼女は,ドリアンの愛を失うのである。
というわけで,普通の童話では,目覚めて,王子の愛にしわあせを得るのが,逆になる。同性愛者が,いたずらで書いた物語と言われるゆえんである。この物語に終わりで,肖像画は,決して戻ってはいけないとの批判もあった。それは,肖像画が醜くなってしまうのでは,ありきたりの老醜の物語になってしまうからだ。それもまたひとつの意見ではあろう。
いずれにしても,作品自体はさほど背徳的でもないが,オスカー・ワイルドが性倒錯者であったと評価があったので,この作品はひどく批判された。私生活が乱れている輩の書く作品にろくなものはない,ということかもしれない。
ドリアンは,画像と入れ替わりたい願い,その願いは叶った。だが,彼は,醜くなった画像と永遠の美しさを保つ肉体の落差に耐えられなくなり,画像を刺すことによって,自らの死を招く。物語は,やはり,ドリアンを主人公として,ワイルドの分身を描いているものなのだと思う。
ヘンリー卿は,明らかに全能の語り手ではない。彼は,物語の最後まで,テキストの冒頭の画像の青年の美青年を見つめている。読まれることを拒むテキスト。ドリアン自身は,いつでも美しい芸術作品になりかわりたい。時間を消去したい物語でもある。18年の物語。生ける画像,とインペイされた物語。
ドリアンの生は,蜘蛛の巣だらけの屋根裏部屋に隠される。彼の生は,読まれることを拒むテキストとして,画像という棺に封じ込められ,屋根裏の墓場に埋葬される。ヘンリー卿はいう。バジルについて,魅力的なところは,すべて作品に注ぎこんでしまい,実人生は,偏見・主義・常識だけの人物なのだ。