満足度★★★
妖艶さに欠ける演出
ある村の池を巡る幻想的な物語を描いた泉鏡花の戯曲をオペラ化した作品で、叙情的な音楽と奇を衒わない演出により親しみ易い内容となっていました。
日照りの続く村を舞台に、狂おしい愛と人々の身勝手さが描かれた物語で、前半は原作とは異なる台詞(歌詞)が多く、後半は比較的忠実でした。シリアスな雰囲気が支配的な中、第2幕前半では蟹、鯉、鯰のコミカルなやりとりがあり、その後の悲劇が引き立っていました。
演出が泉鏡花の妖艶な世界観を描けていないように感じられ、退屈することは無かったものの、惹き付けられることもありませんでした。
池の中の生物達のシーンでは竜神を御輿状の頭部のオブジェで表し、魚を模した帽子とカラフルな衣装を纏った合唱とダンサーが賑やかに動いていましたが、無意味な動きが多くて視覚的に煩く感じました。またオフステージで歌う男性合唱がおそらくPAを通していた為に違和感がありました。
音楽はドビュッシーを思わせる美しい響きで、聴き易かったです。鐘の響きを彷彿させる4つの和音の連なりと子守り唄がテーマ曲の様に要所要所で鳴り響き、ドラマの進行を引き締めていました。
セットはリアルな岩と木々で構成された具象的なもので、終盤では新国立劇場の大掛りな舞台機構を活用したダイナミックな演出があり、見応えがありました。