満足度★★★★
フレッシュなヒトラー像
『あの記憶の記録』は、「アウシュヴィッツの後で詩を書くのは野蛮である」というあのアドルノのよく知られた言葉を想起させるものであり、生き残りがいかにして語りうるのか、に真摯に向き合った作品だと言える。しかし果たしてこの真摯さ(生真面目さ)は、有効だろうか? お勉強として、ナチス・ドイツがユダヤ人たちに対して行った「歴史」を教育・周知する効果はあるだろうけども、むしろ本気でこの問題に取り組もうと(その必要があると)感じているのなら、おそらくこの道では到達できないのではないか。既視感を食い破るものは感じられなかった。
いっぽうの『熱狂』はまさに熱くさせられる快作であり、俳優陣に安定感もあった。この「熱さ」が罠であるというところが良い(ネタバレボックスへ)。