『熱狂』『あの記憶の記録』ご来場ありがとうございました!次回は9月! 公演情報 劇団チョコレートケーキ「『熱狂』『あの記憶の記録』ご来場ありがとうございました!次回は9月!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    フレッシュなヒトラー像
    『あの記憶の記録』は、「アウシュヴィッツの後で詩を書くのは野蛮である」というあのアドルノのよく知られた言葉を想起させるものであり、生き残りがいかにして語りうるのか、に真摯に向き合った作品だと言える。しかし果たしてこの真摯さ(生真面目さ)は、有効だろうか? お勉強として、ナチス・ドイツがユダヤ人たちに対して行った「歴史」を教育・周知する効果はあるだろうけども、むしろ本気でこの問題に取り組もうと(その必要があると)感じているのなら、おそらくこの道では到達できないのではないか。既視感を食い破るものは感じられなかった。

    いっぽうの『熱狂』はまさに熱くさせられる快作であり、俳優陣に安定感もあった。この「熱さ」が罠であるというところが良い(ネタバレボックスへ)。

    ネタバレBOX

    まず『あの記憶の記録』については、終盤の幾つかの対決シーンに白熱するものはあったけども、まず長男のキャラクター造形がいささか単調というか、愚かすぎたと思う。理想に燃えるのは結構だが、あまりにも無知すぎる。先生のキャラクターも、もっと複雑に描かれてほしい。なぜ彼女があのような立場をとるのか、今ひとつ伝わってこない。過去を語ることを頑なに拒んでいたはずの兄が、弟に触発されて語り出す心境の変化についても、もう少し細やかな描写が必要だったと思う。

    で、『熱狂』だけれども、これはなんといっても、ヒトラー(西尾友樹)にあのチョビヒゲを付けさせない、というところが良かった。よくあるヒトラー像とは一線を画したところで、新たなヒトラー像を創出することに成功していたと思う。見た目の小道具に頼らず、しかし演説の模写などはかなりよくできていて説得力があった。またぜひ観てみたい俳優さんだなと思った。なぜ、ナチスの党員たちが、ヒトラーを支えていったのか(あるいは反目していったのか)。そして彼がどうして人々(大衆)の支持を得たのか。このカラクリを見事な政治劇に仕上げていたし、最後は客席を「熱狂」させるような仕掛けになっている(つまり、観客はあろうことかナチスに感動してしまう!)。

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    2013/06/19 01:28

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