そして、明日-いつわり-は箱の外へ 公演情報 劇団 暴君ハヤブサ’69「そして、明日-いつわり-は箱の外へ 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    丁寧な作り
     Team真を拝見。全体としてとても丁寧に作っていることに好感を持った。物語は、死刑執行1時間前の死刑台へ通じる部屋。教戒師と死刑囚が、執行前の最後のひと時を過ごしている。だが、この死刑囚は、ちょっと変わっていた。

    ネタバレBOX

     自分に関わりのあること、名前や生年月日、自らの人間関係などに関する記憶を失くしていたのである。無論、自分の罪についても知らなかった。在る朝、そのことに気が付いた彼は監守に、この事を訴え、精神科医の診断を受けることになる。何人かの医師が、彼の症状を診断するが、一人を除いて記憶喪失だという診断は下さなかった。その結果、最高裁の判断は死刑を執行で確定した。
     研修医が診てさえ明らかな記憶喪失を殆どの医師が、否定したのは面倒なことに関わりたくない一心からであった。詰り、放っておけば、死刑になる。死人に口無しで誰からも咎められる気遣いはない。一方、もし、自分より業界上位の人物と異なる判断を出して誤診ということにでもなったら。多寡が死刑囚の為にリスクは負いたくない、という保身である。だが、それは正しいのか? と一人正しい判断をした医師は問うのだ。そもそも、医師の仕事とは、人の命を救うこと、はっきり記憶喪失の症状が出ているのにそれを指摘しないことは、医師として、人間としての人倫に悖る。彼は、精神科医師として、若干の躊躇はあったものの、普遍的解を選ぶ。それは、彼の亡くなった彼女が夢に立ち、「自らの信ずる所に従え、私がついている」と応援してくれたからであった。医師の迷いの原因とは、記憶喪失の患者、殺人犯は、この医師の彼女を殺していたことにあった。
     物語は、このように密接に絡みあいながら、徐々に犯人の記憶を呼び覚まして行き、終に完全にその覆いを解く。最後に犯人は己の罪を自覚し、心から犠牲者に詫びて罪を背負って死刑台へ進む。
     この間、教戒師は、登場時の蓮っ葉な様子から、死刑囚との心理的対決を含む支えになるなかで真に真面目に人として死刑囚に向き合う。殺人犯を演じた松田 勇也のどこかおどおどしつつ緊張したような、死刑囚の不安の表現と共に、教戒師のドラスティックな変化を演じた小綿 久美子の演技、その演出も気に入った。同時に、一人、自分より権威のある医者達に逆らい、また、彼女を殺された痛みに耐えて前に進んだ医師を演じた牛居 朋広の若きヒポクラテスぶりも良い。更に、彼女役を演じた那智月 まやが、普通の女の子らしさを自然に出して、この特異な情況に安定感を齎している。出演した役者其々が、ちゃんとキャラを立て、己の仕事を果たしたバランスの良い舞台であった。演出のバランス感覚を褒めておきたい。

    0

    2013/06/17 01:39

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大