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恐怖が始まる
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monzansi(713)
茶の間から のぞく原発
緊迫感伝わる舞台だった。
このカウントは、今私たちに問われている数字だ。
ネタバレBOX
1
戦後日本ではもはや制御できない安全保障上の危機だった。
液晶テレビの画面に映るのは、東北沿岸に押し寄せる津波と、福島第一原子力発電所が水蒸気爆発により「吹っ飛んだ」その光景。
街中に「がんばろう、日本。」の文字が溢れかえり、商店街では様々な団体の少年少女が「募金にご協力 お願いしまーす」と道行く人へ訴え掛けた。
しかし、あれから歳月が流れ、商店街で募金を呼び掛ける少年少女の姿が消えた。代わりに今そこにある日本は、原発再稼働を容認する世論である。
環境活動家の田中優氏が言うように、「東日本大震災は援助より、自立的な経済復興の段階」(2012.4.19 武蔵野青年会議所主催『復興シンポジウム』)ではあるが、原子力発電所の所在地で約3000人の住民全員が避難する双葉町の井戸川前町長は県の復興計画において「復興計画を策定できない状況」(2013.3.13 早稲田大学 第二回シンポジウム『東日本大震災と人間科学』)と、嘆く。
つまり、東日本大震災からの復興という一つのパッケージであっても、原発被害の軽微な岩手県・宮城県、年間限度の20mSv超えが指摘される飯館村が位置する福島県とでは、別のアプローチをした方が効果的なのだ。
東日本大震災が津波・地震だけの被害であれば、地域経済の自立の段階で、財務省が「19兆円フレーム」と意気込んだインフラ整備中心の復興策が要る。この場合、日本人が「東日本大震災」に無関係で構わない。
だが、原発事故を含む複合災害である以上、福島県は 旧来型の災害復興策に伴う自律回復は通じず、現在も20キロ圏内にいた住民は月10万円の補償金を受け取っている。
原発の電力網のもと、国民の生活・経済が成り立っていたわけだから、「原発事故」は これからも全国民が当事者である。
そもそも、福島第一原発の事故は収束段階にあるとする東電の説明は疑問だ。
脱原発を唱えたことで辞職した元駐スイス大使・村田光平氏が、重大な報告をされている。
「現在、4号機のプールにある1535本の核燃料棒はかろうじて冷却されていますが、もし4号機が倒壊すれば、冷やす術はありません。そうなると、最悪の事態---核燃料棒が溶け、メルトダウンが起き、膨大な放射性物質が撒き散らされるという、いまだ人類が経験したことがない悲劇が起こります」
「今、4号機も含めて、福島第一原発に残されている核燃料棒の総数は1万4225本にのぼります。米国の核科学者ロバート・アルバレス氏によれば、チェルノブイリの85倍のセシウム137が福島第一原発に存在するそうです。4号機に限っても、セシウム137の量はチェルノブイリの10倍になるのだとか」(現代ビジネス2012.9.14 脱原発を訴える「反骨の外交官」が緊急寄稿! 村田光平「新たな一大汚染の危機と国・東電の無策ぶり」)
収束した どころか、建屋の破損状況よっては チェルノブイリの比ではない、人類未到達の事態もありうるだろう。再び、震度6強クラスの地震が起これば、コンクリート補強が弱い1号機、2号機、3号機、4号機の建屋が全壊する可能性もある。
それこそが、福島第一原発は非常時のままであると断言できる理由だ。
既に、原発事故はチェルノブイリ以上の大きな放射能被害をもたらしている。
ノルウェー大気研究所(シェラー)の大気科学者 Andreas Stohlが率いたノルウェー研究チームの報告書の一部を紹介したい。
「原発から放出された放射性物質の量の解明は、事故の経過の再現に比べてはるかに難しい。政府が6月に発表した『原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 ―東京電力福島原子力発電所の事故について―』では、今回の事故により放出されたセシウム137は1.5×1016ベクレル(Bq)、キセノン133は1.1×1019Bqと推定している2。セシウム137は半減期30年の放射性核種で、原発事故による長期的汚染のほとんどの原因となっている。一方、キセノン133はウラン235の崩壊によって放出される半減期約5日の放射性核種であり、原発事故や核実験の際、初期に観測される。
ところが、Stohl らが原発事故の再現結果に基づいて推定した放出キセノン133の量は1.7×1019Bq、セシウム137の量は3.5×1016 Bqで、政府の見積もりよりキセノンが約1.5倍、セシウムが約2倍となった。
キセノン133の放出量は、チェルノブイリの総放出量1.4×1019Bqよりも多いことになる」(Atmospheric Chemistry and Physics 発表 日本語訳 三枝 初夜子)
メディアは、日本の原発事故が国際原子力事故評価尺度に基づき「レベル7」の判定を受けた事実に対し、「チェルノブイリよりはマシ」を強調した。
最大の根拠とされたのは、チェルノブイリ原発事故では28人が死亡したのに対し、福島第一原発事故で死亡した者はいなかったからだ。たしかに その通りではあるが、チェルノブイリで亡くなった人は全員が消火作業にあたった作業員だった。
チェルノブイリ原発は鉛型のため、事故直後に猛烈な火災が起こり、それを消すために国家の指令で駆り出された人々なのだ。28人の死者が出てしまった背景には、鉛型原発特有の火災・作業員の軽装備の二点が考えられる。いずれも、原発の型や行政管理に原因があるわけなので、原発事故の深刻さ=レベルとは大きな関係はない。
事故当時の保安院は、「放射能放出量はチェルノブイリの1割程度」(時事)とし、国民に安全性を装ったが、前記のノルウェー研究チームの報告にあったように、放射線の種類によっては“チェルノブイリ超え”が確認されている。
むしろ、福島第一原発事故は原発事故評価尺度に基づけば、レベル8の段階に達しているのではないか、と訴える米国の原子力科学者も存在する。
3.11の際、CNNで原発事故のニュースコメンテーターを務めた、アーニー・ガンダーセン氏も その一人だ。CNNのニュースコメンテーターは、その役割において政府の報道官並みにあると断じても差し支えないのではないか。
ガンダーセン氏は、次のように述べている。
「津波が襲ってから一週間後、私はCNNに出演しました。私はジョン・キングさんに言いました。福島第一原発事故は地震によって起きたものでもなければ、津波によりディーゼル発電機が破壊されたことが原因でもない。
衛星から撮影された映像を見ると、津波が海沿いにあるポンプを破壊しているのがわかります。ご覧になれば明らかなように完全に破壊されています。ポンプは元来地震などの自然災害には耐えられるように作られています。しかし津波が襲った後の沿岸部は、金属がねじ曲げられまるで廃棄場のようです」
そして、原発の冷却機能が停止した理由は津波の到来のみならず、地震の影響も含めた原発屋内の複合的な「ポンプの故障」だと語っている。
同じような指摘は、例えば今年の3月に東電関係者以外で初めて原発屋内内部に入った川内博史 前民主党衆院議員(元 衆院 国土交通委員長)も発言されている。
しかし、その報道は翌月に東京新聞が『こちら特報部デスク』の中で詳報しただけで、多くの新聞・テレビメディアは沈黙を守った。
原発事故発生直後、メディアは どのような報道を繰り返していたかを再現しなければならない。
日本の原発事故がレベル7の評価を受けた当日、時事通信社は次の記事をネット上に配信した。
「危機的な状態が続く福島第1原発事故。その深刻度の評価が地震発生からほぼ1カ月たった4月12日、国際原子力事故評価尺度(INES)で最も深刻な事故に当たる「レベル7」に引き上げられた。
外国メディアは「1986年の(旧ソ連の)チェルノブイリ原発事故に並んだ」(ロイター通信)などと速報。国内からは「先が見えない」と怒りの声が上がった」 2011年4月12日)
もちろん、政府の圧力もあってか、「福島の米は安全です」「風評被害で苦しんでます」の報道は続いたが、一方で原発事故で緊迫する報道も伝えた。
では、今は緊迫した事態ではないのだろうか。
チェルノブイリでは28人の死者を出しながらも1年以内に石棺が完了し大量の放射能漏れは解決したのに比べ、日本は現在でさえ屋内に作業員が入れず水棺の作業へ手を付けられていない。福島第一原発事故には1万4255本の燃料棒が未だに残ったまま。再度マグニチュード7クラスの地震があり原発建屋が崩壊すれば完全溶融することになる。
東電の汚染水流出も、国際的に日本の事故対応能力に懸念を与えてしまった極めて重大な問題だろう。
国際科学雑誌『Nature』の記事(2012.11.14)に汚染水問題の解説が載っている。
「2011年3月、マグニチュード9.0の地震が日本沿岸を襲った。
(中略)
原子炉6機のうち、3機でメルトダウンが発生し、大量の放射能が大気中に放出された。事故発生後、非常用冷却水が海へと流出し、汚染が海洋に広まった。
この原発で海洋へと放出された放射能の量は、過去のどの例と比べても飛びぬけて多い。ウッズホール海洋研究所(米国マサチューセッツ州)の科学者が提示した新しいモデルでは、発電所から漏出した放射性セシウムの量は16.2 x 1016ベクレル(Bq)であると推測されており、これは大気中に放出されたのとほぼ同量である。
その放射能の大部分が太平洋に拡散し、非常に低い濃度にまで希薄化した。しかし、発電所周辺の海洋では、セシウム137の量は1,000Bqのまま横這いであり、自然放射線量と比べると比較的高いレベルである。同様に事故から1年半が経過したものの、底魚から検出される放射性セシウムのレベルに変化はない」
周辺の漁業被害は2000億円にのぼる試算もあるという。
「(略)~汚染の主な原因として神田(注 神田穣太 東京海洋大学教授)が挙げているのは、海底堆積物だ。約95TBqの放射能セシウムが発電所周辺の砂の海底に入り込んでいる。しかし、その到達経路は不明である。砂が直接吸収したかもしれないし、プランクトンなどの小さな海洋生物が放射能セシウムを吸収し排泄物をとおして海底に堆積させた可能性もある。河川からの有機堆積物もまた汚染の原因となっている可能性があると、神田は述べる。どのようにたどりついたかに関わらず、「堆積物中に有機物質が混じっていたに違いないのです」と神田は強調する」
原発事故は収束したのではなく、「今そこにある危機」であることを改めて認識させてくれる。
汚染水の堆積物への濃縮が、さらなる放射能汚染を引き起こす。
そのような、極めて重大な事案を、周辺諸国に事前に通知することなく行った日本政府は 「ここまで劣化したのか」とばかりに国際社会から非難された。
放射能被害は、原発作業員のみならず、福島県の一般市民をも巻き込み、蝕み続けるだろう。
文部科学省は、福島県の子供と、他県の子供の甲状腺異常比較調査結果を公表したが、福島県の子供だけ異様に甲状腺異常の数字が低いのは人為的であることを逆に証明している。
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2013/06/02 22:19
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