満足度★★★
エネルギー溢れる老婆達
老婆達が法廷を占拠するという過激な物語を、熱さとユーモア、少しの諦念を持って描いていて、役者達のエネルギーに圧倒されました。
真っ暗な空間の床に格子状に整然と並べられた水槽の中にうずくまる役者達がモノローグ的な台詞を繋げて語る静謐なシーンから一転して、法廷のセットへ一気に切り替わるという、蜷川さんらしい手法が盛り込まれた序盤に続き、アナーキーで個性豊かな老婆達が裁判官や弁護士を現状に対して何もしていないと次々に断罪していくシーンが展開し、心に切実な思いを秘めつつ奔放な振る舞う老婆達の姿が爽快でした。
最後には自分の孫ですら殺してしまう物語にギリシャ悲劇の様な厳かさを感じました。クライマックスで一斉射撃を受ける時に若返った姿になる場面で、ネクスト・シアターのメンバーと入れ替わるのがとても鮮やかで印象に残りました。
体制側の人間を演じた男性陣が(おそらく)演技ではなく実際に台詞が出て来なかったり呂律が回ってなかったりする度に女性陣から「聞こえない」、「はっきり喋れ」と野次られているのが物語的にもマッチしていて、この劇団ならでは強い表現になっていました。
詩的な台詞や当時の左翼運動的な回りくどい言い回しの台詞が多く、物語としては捉え切れない部分もありましたが、体を張ったパワフルな演技に引き込まれました。