レミング ~世界の涯までつれてって~ 公演情報 パルコ・プロデュース「レミング ~世界の涯までつれてって~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    ものすごく心地良いヂャンヂャン+寺山
    先日行われたイベントで知りましたが、5月4日が寺山修司没後
    30周年なんですね。寺山の仕事の中では圧倒的に演劇が好きです。
    不条理で夢幻的な展開がカフカっぽくてかなりツボ。

    本作『レミング』は、ファンにとっては天井桟敷の最終公演作品として
    ... 有名なのですが全く未見で、それだけに気になっていました。今回
    観ることができて、本当に嬉しかったです! そしてその期待どおりの
    作品でした。

    ネタバレBOX

    この舞台、演出が本当に面白かった。奇妙にねじれたような、でも
    すごく癖になるBGMにかぶせた、役者達の5・7拍子で取られた動き、
    そこで鳴らされる足音や台詞の響き、その全てが音楽的に、整然と
    機械的にかっちりと演出されていて。

    洞窟のようにも、都市の摩天楼のようにも見える舞台装置や、
    宮沢賢治っぽい、どこか夢幻感のある衣装。すごく良かったです。
    寺山が観たら、多分絶賛していたと思う。あくまで多分だけど。

    あのミニマリズムは慣れてくると心地良くて、ずっとこの空間にいたい…
    そう思えるようになってきますね。違うかもしれないけど、四つ打ちの
    ダンスミュージックに身を任せるような、そんな高揚感があります。

    ダンスミュージックで思ったけど、寺山の扱う言葉は多分にヒップホップ的、
    今回の作品の演出に合わせて、細かく分解された流れで台詞を耳にして
    実感しました。言葉の意味ではなく、流れや響きを重視していると思しき
    ことや、韻をふんでいるようなかけ合いかたとか、

    多分、今、寺山が生きていたら、ジャズの流れで間違いなくヒップホップに
    傾倒していたと思いますね。そして20歳若かったら、絶対にその作風は
    「ままごと」や「マームとジプシー」のそれと近かったはず。抒情的な彼等と
    違って、冷ややかで即物的な作品に演出されそうな気がしますが。

    物語は意外と笑える要素が多い、というか、笑いどころばかりでした。
    八嶋・片桐のコンビネーションがよくて、いいタイミングで台詞を
    差し込んできて、結果、客席大爆笑。

    一番笑ったのは、無くなった壁の代わりに、修理人がサルトル『壁』を
    置いていったのに対して、こんなステップで超えられそうなの、壁じゃ
    ないだろっ! ほらっ、ほらっ! って、必死に八嶋が飛んでみせる場面と

    松重豊扮する主人公の母親が分裂して、片桐がモグラ叩きよろしく
    追っかけて回る場面かな。客席も、その笑いを誘う様子にドッと
    沸いてたな。

    最後、狂気に意識が分裂し始めた八嶋が静かに眼鏡を外してニヤっと
    笑い、ボソッと台詞を呟いた刹那、けたたましく鳴り響く音楽と一緒に、
    舞台上の狂気が一気に客席にまで拡散していくような気がして、思わず
    ぞぞっと鳥肌が立ちました。なかなかない希有な体験をしました。
    また、生で観てみたいな。そうしたら、もっと別の構造が見えるのかも。

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    2013/05/19 06:00

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