満足度★★★
ストイックな3作品
バティックのメンバーの内の3人がそれぞれ20~30分の自作を踊る公演で、いずれの作品も安易に音楽に合わせて踊ることを避けていて、ストイックな雰囲気がありました。
『そしてとそれから』(梶本はるか)
暗闇の中で木製の机の軋む音だけが聞こえる冒頭に続いて、音楽なしで机の上だけで様々な重心の移動を試すシークエンス、机から降りて音楽に合わせて地面を踏み鳴らすような動きを体力の限界まで続けるシークエンス、また静かに踊るシークエンスからなる作品でした。
無音の緊張感に対して身体が拮抗出来ていない様に感じる時がありました。真面目過ぎて少々退屈感を覚えたので、少し遊びというか余裕があると良いと思いました。
『スイマー』(中津留絢香)
腕を服の中に入れて寝そべって泳ぐ時の脚の奇妙なフォルムを見せる冒頭、客に向かって不敵な笑みをしながら人数をカウントするシーン、クラゲが泳ぐような手のダンス等、印象的なシーンが多い作品でした。
後半の激しく滅茶苦茶に踊るシーンは、動きをコントロールしている感じが見えていて、もっと暴走感が欲しかったです。中途半端に終わった様に見せて、暗転後に一瞬リフレイン的なシーンがあったのが新鮮でした。
『断章』(矢嶋久美子)
3月に『その部屋の踊り』というイベントで上演した作品の改訂版で、前回より洗練されていて表現が鮮明になっていました。
無音の中を2人がとてもゆっくり歩くだけの静謐な前半に続き、ワンピースを着て、サイケデリックな音楽が流れる中を、1人は激しく動くシークエンスを何度も繰り返し、もう1人は変わらずゆっくりと歩き続ける構成で、デュオ作品でありながら2人が直接的に関わるのは数秒だけで、関係性というよりかは1人の人物の2つの面を描いているように見えました。