満足度★★★
丁寧に作り込まれたデタラメ感
セックスにまつわる話をコミカルに描いたエロティックでナンセンスな作品で、ナイロン100℃結成20周年に敢えてこのような馬鹿馬鹿しい演目を選んだ心意気が楽しかったです。
いくつかのエピソードが断片的なシーンに散りばめられて展開し、終盤はドラマチックに盛り上がりそうになりつつも、そちらの方向には行かず、物語としてまとめることを放棄したようなグダグダな終わり方が印象的でした。
メガネに水玉模様のネクタイ姿の男2人の介入によって作品全体が劇中劇の体裁となっているメタ構造があまり活かされていなかったのがもったいなく思いました。
笑える所は沢山ありましたが、ケラさんのシリアスな作品の中に織り込まれる切れ味の鋭い笑いに比べるとインパクトが弱く感じられました。
どうでも良いような内容ながら、役者の演技はしっかりと個性が出ていて楽しかったです。松永玲子さんや千葉哲也さんの大人の色気が素敵でした。ロロ、範宙遊泳、ろりえといった若くて勢いのある劇団からの客演に注目していたのですが、芸達者なナイロンのベテラン勢に押されていて、あまり目立っていなかったのが残念でした。
可動式のパネルを用いた転換の演出がスムーズで、逆にわざと時間を掛けた暗転との対比が鮮やかでした。劇中映像や、役者やセットの動きと同期させたプロジェクションマッピング等、映像のクオリティーが高くて見応えがありました。