【無事に終演しました】タイトル、拒絶【ご来場本当にありがとうございます】 公演情報 ロ字ック「【無事に終演しました】タイトル、拒絶【ご来場本当にありがとうございます】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    男に分かりえない感覚ではあっても
    女性だからこそ、描き出しうる女性像が
    次第にそのコアをさらけ出して。

    豊かに広がるという感覚ではなく、
    でも、そこには登場人物たちの、
    心的風景のリアリティが
    丸まり方も微細さもそのままに
    観る側に置かれて。

    キャラクターごとの肌触りと閉塞を持ちつつ、
    そこに留まり続けることの
    質感が鈍く深く伝わってきました。

    ネタバレBOX

    デリヘルの待合室がセットに組まれ、
    でも、世界はそれを全てとせず、
    そこに束ねられているような感覚があって。

    最初のうちは、どこか猥雑で雑多な雰囲気の物語なのですが、
    次第に場が解け、エピソードが重なっていく中で、
    その場がデリヘル嬢の集まりから、
    様々な個性が束ねられたというか
    集められたというか、
    吹き溜まった場所に見えてくる。

    正直なところ、男にとって、
    舞台上の女性たちにそのまま感情移入をすることには
    難しい部分があって。
    舞台で語られるとおり、
    女性がトイレットペーパーをなぜ沢山使うのかわからないが如く、
    体を売るという感覚なども、
    概念や対岸の当事者としてわかっても、
    実感として理解できているわけではない。

    でも、直観的な理解はなくても、
    その場所にあるがままにあり続けることの感覚は、
    舞台からじわじわと深く伝わってくる。
    デリヘルの世界に役者達が描き出すキャラクターが、
    それぞれに個性をしっかり持ちながら、
    個々の色に貫きつつ 変わることなくその場にあり続けていて。
    それが、傍若無人であっても、滑稽であっても、
    クールであっても、愚かであっても、
    種々のエピソードや修羅場があったとしても、
    そこに吹き溜まる風情に変わりはない。
    一番外側に具象される、
    目の回るような都会の時間、そして訪れる日々のなかで
    いろんなタイプの女性達が、
    その場所で、同じ質感に浸されながら
    体を売り続けている・・・。
    シーンが重なる中で、舞台は愚かさや禍々しさに満ちて・・・。
    でも、そのなかに、
    次第にエピソードたちの表層とは異る感覚に表れて、
    その喧騒の向こう側に広がっていく。

    男が、その女性たちの姿をののしって総スカンを喰うシーンに
    彼女たちがその場に生きる感覚の裏面が露わにされて。
    点かないライターと
    そして妊娠した姉が自らのライターで火を点けるシーンに
    浮かんでくる踏み出しの感覚に、
    No.1だった一人の女性の
    鈍色のたとえようのない心風景が広がって。
    売ろうが、買おうが、揉めようが、ぼやがおきようが、
    ぐるぐる回って、でもそこから舞い上がることのない
    吹き溜まりの枯葉の如き感覚が、
    終演後も心に深く置かれ霧散することはありませんでした。

    役者たちも秀逸、ロールの個性がしなやかに描き出され、
    その想いの隠れ方や晒し方にも、
    ステレオタイプでないナチュラルさがあって、
    刹那を平板にしない。
    だからこそ、垣間見える、
    表見とは異なる閉塞も観る側に共振するように描き出されて・・・。
    この作品、男性と女性では受ける感覚が異なるのかもと思いつつ、
    でも、その領域を超えて、
    日々を生きることのコアを削ぎだす作り手の力量に
    目を見開いたことでした。

    作り手の持つ切っ先がさらに舞台上に映える余白も感じつつ、
    今後の作品が実にたのしみになりました。

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    2013/02/22 06:46

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