トランス 公演情報 演劇ユニット 虹色cafe「トランス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    とっくに送稿したはず
     Je est un autre. Rimbaudの一行であるが、余りにも有名なフレーズなのでご存じの方も多かろう。“私とは他者だ”と訳せる。但し、通常の仏文法では、be動詞に当たるêtreの一人称単数形の形はsuisであってestでは無い。後者は三人称単数形の形だからである。然し乍ら、この表現にこそ、Rimbaudの天才が見て取れる、と見るのが正しかろう。  

    ネタバレBOX

     何でこんなことを書くのか? 疑問に思われるかもしれないので理由を説明しておこう。所謂、統合失調症に至る過程の離人症の話がメインになっているからである。この作品の書かれた当時の精神病理学では、何処からが異常で何処までが正常なのか線引き出来るような段階に達していなかった。現在でも、脳の働きには未解明な部分が大変に多く、明確な線引きが出来るようになったとは聞いていない。何れにせよ、別の見方で正常、異常の判断を下しているのが実情である。例えば、社会参加できるなら正常と看做すなどである。M.フーコーの定義に従えば、“狂気とは純粋な錯誤である”とは言えるが。
     グダグダと以上のようなことを述べたのは、原作にはない問い掛けが、最後の最後に仕掛けられているからである。終盤、3人のうち誰が医者で誰が患者なのかを巡ってくどい程に主客が入れ換わるのだが、3人を残して鉄の扉が閉まるような音がするのである。ということは、3人とも患者ということになるだろう。最後の最後にこのようなどんでん返しが仕組まれていることの意味は何か? それこそ、観客である我々が、狂っているのではないか? との問い掛けではなかったか?

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    2013/02/21 03:01

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