満足度★★★★★
48の良い仕事。
劇団バームクーヘン所属の劇作家で小芝居をポッドキャストで配信する『cassette conte』主宰、またtoiの作家としてもおなじみ、柴幸男氏の短篇新作プレビュー『反復かつ連続』を観る@恵比寿。
プレビューのため内容は割愛するが、彼の作品はいつもワクワクさせてくれる発想力に富んでいる。
そして今回。
彼は、昨年toiをやっていた時よりも、その突飛な発想をより確実に具現化する力を付けてきたように感じた。
ミニマムな環境の中(舞台は70cm×70cm)で、表現したいことの核を見失わずこれだけの作品を作り上げた彼の脚本と演出にまずは拍手をおくりたい。
『演劇』において、演出家が自分の求めているものを実現する方法はまず役者との対話である。
その点において、『あ・うん』の呼吸が両者間に成立していた場合、より密に、かつスピーディーな稽古が期待できる。
後に柴氏に聞いたところ、実際の稽古はかなりシビアなものだったようで、演出家と役者との地道な作業の積み重ねが結果に繋がったらしい。
この結果は同業の者として非常に嬉しい事だ。
それに加え、よほど脚本・演出と役者との相性が良かったのだろうと思う。
そう感じさせる程に役者が芝居を乗りこなしていた印象があった。
表記するのを忘れたが、この芝居は女優のひとり芝居である。
演じるはインパラプレパラートの内山ちひろ。
終演後、この芝居は彼女でなければ成立しなかったであろうと強く感じた。
環境が環境なだけに(重ねて言うが、舞台は70cm×70cm。実際に測るとよく分かる。)、非常に芝居の空気が抜けやすい状況の中、最後まで彼女の母性とも言える包容力が空間を包み込んだ芝居は日常の中から垣間見える『やさしさ』に満ちていた。
内山さんの得意技を封印した、との柴氏の言葉通り、彼女の純粋な女優としての魅力を引き出した演出だったように思う。
同時に彼女のポテンシャルの高さがよく分かる芝居であった。
内山ちひろ、今後注目すべき女優である。
総評。
『反復かつ連続』。
正直なところ時間的にギリギリだったので行こうかどうしようか迷っていたが、本当に行ってよかった。
おそらく行かなければ後悔していただろう。
何よりも終演後、柴氏が私に観てもらいたかったと言ってくれた事が本当に嬉しかった。
お酒を呑みながら素敵な芝居を観て仲間と語り合う、そんな贅沢な夜を過ごさせてもらった柴幸男に感謝する。
・・・しまった、真面目に褒めすぎた。