劇団 マウス オン ファイア サミュエル ベケット『消滅するまえに…』 公演情報 シアターX(カイ)「 劇団 マウス オン ファイア サミュエル ベケット『消滅するまえに…』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    当日券
    最初から予想はしていたけど、
    シンプルながらも、あまりに濃密な作品群のため、
    100m無呼吸で走り抜けるような、
    息継ぎなしでずっと海に沈むような時間だった(苦笑

    削ぎ落としながらも、
    内に見える心は豊かで、
    闇夜でありながら、目に入る光は啓示に満ちていた。

    戯曲自体は、以前に何度か読んでいたが、
    海外の劇団を見て、
    音や光を交えながら豊かに語る様子に
    自分が予想もしなかった言葉の向こうの豊饒さを見せつけられた思いだった(笑

    ウィリアム・ブレイクやレンブラントの名前がプレトークにあったが成程と思った。

    確かにウィリアム・ブレイクなどは自分も好きだけど、
    後期ベケットを読み解く上では
    常に心の中に置いた方が良いビジョンかと思った。

    ベケット批評の本はあまり読んだことが無いが
    (歴史とかでもそうだけど、自分は概説や批評的なものを読むことはあまりなく、
    その分の時間があるなら、原作やその当時の時代に書かれたものを読み直すことが多いので・・・
    自分もぼんやりと近いイメージではないかと薄々は感じていた画家たちの描いた景色を、
    ハッキリと戯曲の向こうに配置する勇気を
    この舞台は与えてくれたようにも思う(笑

    また、この劇団の人びとが、
    ベケットの戯曲の技巧的な面よりはむしろ、
    ベケットの人となり、
    母親に対する思いなど、
    非常に個人的な感傷を掘り起こすことに
    心を砕いていることにも感銘を受けた。

    ベケットの戯曲は、
    高度に感覚的で難解な代物であるというよりはむしろ、
    戸を叩いて響く音がその時の感情によって微妙に揺れ動くような、
    子供のように素朴でアナログな感性と、
    死を前にして心惹かれる
    宗教的な啓示とが
    隣り合わせで存在することに特徴があるようにも思ったりする。


    特にベケットの自伝的な感傷(母親への感情など)が込められた作品群をこうして並べたときには、
    一見素朴で時に幾何学的な想像力に満ちたイメージの列の中から、
    ベケット本人の温かみが泉のようにあふれ出ていることを感じる。

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    2013/02/16 00:41

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