ヒューイ 公演情報 Amrita Style「ヒューイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ギャンブラーの孤独
    1928年のニューヨーク、安ホテルのフロント係チャーリーを相手に
    酔ったギャンブラー、エリーがヒューイの話を延々と続ける。
    チャーリーの前のフロント係だったヒューイ、
    いつもエリーに「馬はどうでした?」と尋ねたヒューイ、
    そして先週亡くなったヒューイ・・・。
    男二人芝居の熱演、若干単調さは否めないが、時代の空気を感じさせる舞台だった。

    ネタバレBOX

    客入れの時点でもう舞台の奥、ホテルの受付カウンターには
    男がひとり座っていて、ぼんやり客席を見ている。
    先週ヒューイが亡くなり、後任のフロント係になったチャーリー(木下雅之)だ。
    夏の午前3時、ニューヨーク・ミッドタウンの街を時折靴音が通り過ぎる。

    やがて酔っぱらった常連客のエリー(高城ツヨシ)がやって来て、
    新米のフロント係を相手に喋り始める。
    彼の話は死んだヒューイのことばかり。
    ヒューイはどんな時にも変わらない態度でエリーを迎え
    その日のギャンブルの話を聞きたがり、自宅にも招待した。
    エリーはギャンブルで大もうけをしたこともあるが、反対に大損した事もあった。
    エリーは次第に、ヒューイ相手にホラ話をすることで
    ギャンブラーとしての自信を回復し、また次の勝負に向かって行った自分に気付く・・・。

    時々床に当時の白黒写真などが映し出されて、雰囲気は伝わるのだが
    私の席からは良く見えなくて、何が映っているのか判らず残念だった。

    エリーの酔っ払いぶりは終始スキがなくて良かった。
    酔っぱらいながらも次第にヒューイに対する心情が変化するところが上手い。
    ヒューイの家に招待されて、内心女房も子どもも面倒くさいと思っていたが
    行ってみれば「子ども達もおとなしくて、悪くなかった」。
    なのに「子どもは動物の話が好きだろう」と考えて
    「馬の話」など始めて、ギャンブル嫌いのヒューイの女房から
    ひんしゅくを買ってしまうくだり、可笑しくて客席からも笑いが起こった。

    “ダメなやつ”呼ばわりしていたヒューイに、実は救われていたと認めるエリー。
    次第にエリーの最近のツキの無さや、借金に追いつめられた苦境が浮かび上がってくる。
    「これまで上手くやって来たんだ」と自分に言い聞かせるように繰り返すが
    それはそのまま”今度はそうは行かないだろう”という予想と恐怖心、
    そしてもう誰も自分の話を聞きたがらないという底なしの孤独感だ。

    一方的に喋るエリーは、酔っぱらっていて動きも限られるし
    同じような台詞回しになりがちだ。
    エリーの話に関心を持てないチャーリーは、もっと動きが少なく
    うんざりした顔で単調な“受け”が続く。
    エリーとチャーリーがマジで絡まないので、二人はずっと平行線のままだ。
    終盤ふたりの共通の憧れである大物ギャンブラーの話題で
    ようやく接点を見いだしたところで舞台は終了。
    そういう話なのかもしれないが、何だかひとり芝居でもいいような気がしてくる。

    作者のユージン・オニールは“鬱とアルコール中毒”に苦しんだ人生を送り
    貧困と絶望をテーマにした作品を多く残したそうである。
    この重苦しい時代背景と、
    “ギャンブルの浮き沈みとそれゆえの止められなさ”に激共感出来れば(私のように)
    彼の言葉を酔っ払いの繰り言と聞き流すことは出来なくなるだろう。

    0

    2013/02/03 04:12

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大