演劇集団 砂地 『Disk』 公演情報 演劇集団 砂地「演劇集団 砂地 『Disk』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    濃密かつ秀逸極まる!
    今まで観た全ての芝居が陳腐に思えると錯覚してしまう程、まるで上質な翻訳劇のような、味わい高度な作品でした。

    人物の一挙手一投足、台詞の一字一句に、目も耳も一瞬たりとも離せない、濃密度の濃い舞台でした。

    こういう硬質な演劇を構築できる船岩さんの才気に、衝撃を受けます。だって、私の長男より、年下でいらっしゃるのに…。

    途中まで、この作品の観劇には不釣り合いな若い女性のけたたましい笑い声が後ろから聞こえたのですが、後半は、固唾を呑んで凝視していたような気配。彼女に、感想を聞いてみたい気がしました。

    これ、外国語に翻訳して、オフブロードウエイとかで上演したら、トニー賞とか取るようなレベルの舞台ではないでしょうか?

    ネタバレBOX

    開幕前に田中さんがひたすら走るのも、落下物と共に人物が登場するのにも、きちんとした意味合いが理解できて、どこかの誰かさんのマンネリ演出とは雲泥の差を感じました。

    カバンや衣類の落下は、対人する人間の心の中に、その人物の存在がドスンと音を立てて、落下するという印象を受けました。

    言い争いなどの台詞の応酬に、自然さが溢れ、まるでドキュメンタリーを観ているかのよう。

    説明台詞がほとんどないにも関わらず、この登場人物一人一人の心象描写が機目細やかで、彼らのこれまでの人生の呻きが、自分の経験かと錯覚するような、不思議な感覚が走りました。

    死んでしまった恋人が、何度も、恋人に向かって「描かないの?」と同じ台詞を口にしますが、観客は、その都度、この主人公の心の内に同化して、疑似体験することで、この繰り返しの台詞が、どんどん重く響く感じがするんです。

    兄と妹の関係、二人の両親の関係が、観ている私にまで、伝染し、心が呻くような思いがありました。

    他の登場人物達の何気ないような台詞の中にも、たくさん共鳴する部分がありました。

    砂地体験は、これで3度目ですが、これだけ、独自性のある息詰まるようなオリジナルを生み出せる船岩さんには、これからも、どんどん、古典をモチーフにしない創作も期待してしまいます。

    最後のシーンで、外国にあるという設定の自販機に、伊右衛門らしき、純日本的なペットボトルが見えたのだけが、やや残念でした。

    あー、それにしても、田中壮太郎さん、ファンになって10年くらいになりますが、益々好きになりました。

    妹役の小瀧さんも、かなりご出演作を拝見していますが、今回が最高!昔観た「ミスターグッドバーを探して」を思い出してしまって、自分には全く経験ないこの女性のトラウマが、己の過去のように感じて、自分も、昔、兄にキスを迫ったような気さえしました。私、一人っ子なのに…。

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    2013/01/28 01:42

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