満足度★★★
良寛の言葉
それぞれ長い歴史を持ちながらも、ほとんど関わり合うことがない、声明と箏と能が、良寛の残した文章や俳句を媒介にして共演するという珍しい公演でした。
中央に能楽師の観世銕之丞さん、その後ろに箏の西陽子さんが位置し、3方の壁に沿って僧侶達が座った形を基本としつつ、僧侶達が客席の周囲を歩きながら歌ったり、キャットウォークに上がって歌ったり、能楽師が客席内の通路を通ったりと空間を大きく使い、様々な方向から聞こえてくる立体的な音響が印象的でした。
わらべうた風の曲や般若心経を倍音が豊かに含まれた声で歌われる中を観世鐵之丞さんが舞う姿が、衣装や照明も相俟って空間全体が金色に輝いている様に感じられ、印象に残りました。
箏のハーモニクス奏法による幻想的な響きの中、良寛の短歌と俳句が壁に映し出され、静かに立っている能楽師の周りにもみじの葉が降り、ゆっくりと暗闇に包まれるラストが美しかったです。
普段の能舞台では離れた所からしか観ることの出来ない、能楽師の静謐で緊張感のある身体表現を目の前で観ることが出来て良かったです。