満足度★★★
巡る季節と回る舞台
子供も楽しめる作品とのことでビジュアルや演技は可愛らしい雰囲気でありながら、変に子供に迎合することのない、シュールで観念的な要素が織り込まれたファンタジーでした。
タイトルでは「音」がいないとなっていますが、言葉を話す声や物音がなくなるのではなく、音楽や音楽に関わる概念がなくなった状況を描いていて、盗まれた鞄型のレコードプレーヤーを探しに1人で出ていった妻と、彼女を探す夫を中心とした四季を一巡りする物語でした。音がいないという設定に沿った、静寂を大切にした演出が印象的でした。
レコードプレーヤーを連想させるフラットな回り舞台を家型のシルエットをしたパネルで空間を手前と奥に分割し、向こう側で小道具を入れ換えながらシーンを転換していく手法が洒落ていて楽しかったです。
長塚さんの演出に感じられる鋭さがこの作品では控えめで、あまり新鮮さを感じられなかったのが残念でした。
出演者の4人それぞれが何役も演じていて魅力的でした。松たか子さんは女役だけでなく男役も演じていて、とてもチャーミングでした。
出演者の内の2人がダンサーなのでダンスに期待していたのですが、がっつりと踊ることはなくてマイム的な身体表現がところどころで用いられる程度だったので物足りなさを感じたものの、演技も味があって良かったです。